ストレスへの対処
「適度なストレス」は大事な時に実力を出させてくれます。それでは、どうすればストレスのレベルを「適度」に保てるでしょうか。その答もやはり、運動なのです。
1.まずコルチゾールについてです。運動をするとコルチゾールが増えます。なぜかというと、運動も実は体にとって「心臓がドキドキする」ストレスの一種だからです。心臓が速く強く打つのは、筋肉に必要な酸素とエネルギーを送り届けるためです。そうやって血液を送り出すことで、運動をするための力がわいてくるのです。
運動が終わると、コルチゾールのレベルは下がります。しかもなんと運動を始める前よりも下がるのです。つまり体の中のストレスホルモンが減るということです。運動を繰り返していると、コルチゾールの量は毎回少しずつ下がっていきます。
つまりどういうことかと言うと、以前だったらストレスに感じていたこと、例えば大勢の人の前で発表する時などでも、運動を続けるうちに前ほどコルチゾールが出なくなるのです。
2.警報器である扁桃体がアクセルをふもうとすると、「海馬」がブレーキをかけてくれるという話をしました。その海馬を何よりも強くしてくれるのが運動なのです。運動すると海馬の中で新しい細胞が作られ、海馬は成長します。海馬が強くなれば、扁桃体のバランスを上手く取れるようになります。
3.では前頭葉はどうでしょうか。脳の分析センターである前頭葉についても同じことが言えます。前頭葉も運動することで強くなります。多くの血が前頭葉に送られて機能がアップするからです。運動により前頭葉は扁桃体とつながりやすくもなるので、パニックになっても素早く簡単にブレーキをかけられるようになります。
4.定期的に運動することで、体はストレスに慣れていきます。脳がストレスは良いものでもあると学べば、扁桃体も心臓がドキドキしたくらいでは警報を鳴らさなくなるからです。
毎日ベストな自分でいるために
ストレスに対する運動の効果はこんな風に応用することも出来ます。大事なこと(もしくは怖いと思うこと)の前に運動をすると、一時的にストレスを減らすことが出来るのです。ただし、その運動はしばらくの時間やらなくてはいけません。校庭で何度かジャンプするくらいではだめです。
何カ月も定期的に運動しているうちに、前よりもストレスを感じにくくなったことに気づくはずです。脳のアクセルとブレーキのバランスが良くなり、普段から落ち着いた気分でいられるのです。
これで、最初に書いたスポーツ選手がなぜ大舞台で活躍出来るかを分かってもらえたでしょうか。試合の前には適度なストレスで自分のパフォーマンスを上げ、終わったらすぐに心を落ち着けて次の試合までしっかり休む。そうやって、次もメダルを取ろうと努力する人もいるでしょう。もしくは日々、ベストな自分でいるという目標もとても良いと思います。