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 普通に考えれば無謀である。これまで野球しかやってこなかった男が、縁もゆかりもないコンサルティングという業界を目指すのだ。ただ、当時はそういった一般的な感覚すらわからなかった。だから、シンプルに自分の進みたい道を目指し、就職活動を続けた。

 同時に、私には純粋に「野球の経験」が社会からどう評価されるのか、それを知りたいという思いもあった。「それがわかれば後進のためにもなる」と考えたからだ。そして「野球の経験は社会でもいかすことが出来るはず」とアピールした。

久古さんが就職活動時に書いた実際の「職務経歴書」の一部

 例えば『自己管理能力』『自己改善するための目標設定・問題提起・解決能力』『失敗の本質をつく分析力』『数万人の前でプレーをして得たメンタリティ』といった要素である。結果的に、30社ほどエントリーして6社から内定をいただいた。

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 比較対象がないためこの数が多いか少ないかはなんとも言えないところだが、畑違いの業界であっても少なくとも5社に1社の割合では「コイツは欲しい人材だ」と思っていただけたことになる。そして現在、コンサル会社に勤務して3年弱が経過する。その中で実感したのは、自分を高めるための努力や本番へ向けた準備は、プロ野球でもコンサルティングでも、どの仕事をする上でも変わらないということだ。

現在はコンサルタントとして活躍する久古さん 本人提供

なぜ「プロスポーツのセカンドキャリア問題」が重要なのか?

 コロナ禍では「スポーツは不要不急」という言葉を耳にするようになり、スポーツそのものの価値を問われるようになった。野球に目を向けてみれば、育成年代の野球人口はこの10年で4割近くも減少している。原因は経済的な理由や、野球をやる環境や設備が減っていることもあるそうだが、私は野球をやることの「意義」が薄れてきているからだと考えている。

 以前はプロ野球選手になることそのものが、ある種の成功に思えた。しかし、昨今では選手たちのセカンドキャリア問題が浮き彫りとなり、引退後に苦労する元プロ野球選手がクローズアップされることも多い。それを見れば、特に子を持つ親の世代は、野球よりももっと「将来に役立ちそうな」習い事や勉強をやらせようと考えるのは自然な流れだと思う。

 だからこそ、私はプロ野球選手のセカンドキャリアの問題は、野球界全体で重要視すべきだと考えている。これまで述べてきた通り、セカンドキャリアの問題は、本人の意識の問題もあれば周りの環境の問題もある。しかし、それら1つ1つと向き合い、現状を変えていく必要があるはずだ。そして何より、プロ野球がいつまでも、子どもたちの「憧れの世界」であり続けてほしいと切に願っている。