「ようこそ! ジャンキーの巣窟へ!」。昨年の暮れ、筆者らが新たな世界の扉を開こうとした瞬間に投げかけられた祝福、あるいは呪いの言葉である。これだけでは何のことかサッパリだろうから、順を追って話をしよう。
多くのボランティアスタッフにより成り立っているコミケ
昨年末、世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット99」(コミケ)が、2年ぶりに開催されたことは多くのメディアでも報じられており、目にした方も多いだろう。
コロナ禍によってしばらく開催が見送られてきたが、予約型チケット制と入場者数制限、ワクチン・検査パッケージの導入など、厳密な感染症対策の上で開催され、大規模なイベントということで大きな注目を集めた。
通常、年2回行われるコミケは、多くのボランティアスタッフにより成り立っている。スタッフは成人であること、過去にコミケに参加したことがあるなど、いくつかの条件を満たす人がコミケ準備会に登録し、その活動を行っている。その数は、登録ベースでおよそ3000人という。
また、コミケ開催前日に行われる設営作業やコミケ終了後の撤収作業では、スタッフ以外に多くの参加者が自主的に参加して人海戦術で行われている。
近年はコミケについての報道も多く見かけるようになったが、サークル参加の創作者が中心で、こういったコミケを支える人々の活動についてはそう多くない。そこで本稿では、コミケの前日設営に筆者自身が参加し、大規模イベントとなったコミケを支える人々の活動の一端をお伝えしたいと思う。
2年のブランクが空いたコミケを記録したい
本論に入る前に告白するが、筆者はコミケ一般参加歴は24年、サークル参加歴は9年ほどであるが、この間にスタッフ登録をしたこともなければ、前日設営に参加したことも一度もなかった。しかし、サークル参加でスタッフに助けられたことが多々あり、参加者として少しでもコミケに貢献すべきでないかとの想いがあった。そして、コロナ禍によって2年のブランクが空いたコミケを記録したい想いもあり、設営への参加とその記事化を行うことにした。
なお、コミケの設営などの準備や当日の様子等はネット上に写真付きで個人のレポは多くあるが、メディアによるものは準備会への取材申請が必須であり、本稿も申請の上で執筆されており、潜入レポといった類のものではないことをお断りしておく。