昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/01/15

がらんどうだったホールに…

 12時頃になると、業者のトラックから長机が収納された台車をホールの各所に配置する。ここから人海戦術で机を設置する設営になる。設営組が東館に現れ、人がまばらだったホールもだいぶ賑やかになった。ビッグサイト全体で600人以上だから、100人は下らないだろう。測量組よりも平均年齢は若めに見えた。

トラックから降ろされる机
設営組も到着した

 設営組の体操が終了後、机の設置にかかる。台車から1人につき1つの机を受け取り、測量で貼られたテープに基づいて設置を繰り返す。人海戦術で行われていくが、設置のスピードは速く、もたもたしていると近くの設置場所がいっぱいになり、遠くの設置場所まで机を運ぶ羽目になる。

 がらんどうだったホールにまたたく間に机が整然と並んでいく。途中、業者の車が出られなくなるため、机の設置を見合わせたりもしたが、1時間もかからないうちに机と椅子の設置は完了した。

東館に設置された机

 コミケに参加したことのある方なら上の写真でおわかりいただけると思うが、通常は机を隙間なく並べているのに対し、今回はコロナ対策のために余裕をもって配置されている。その分、配置できるサークル数は少なくなるが、コロナ禍でようやく開催に漕ぎ着けたコミケだ。共同代表の挨拶にあったように、今までのコミケに戻る日が来るまでやることをやるしかないのだろう。

 13時頃にはほとんどの作業が終了した。例年では共同代表らによる反省会等が行われるのだが、今回はそのまま流れ解散という形になった。筆者を含む参加者は帰途についたが、スタッフは設営終了後もサークルの前日搬入といった作業を続けていく。

コミケのもう一つの楽しみ

 前日設営を終えてみると、今までサークル参加で当たり前のように使っていた机が、これほどの労力を要して設置されたという当たり前のことに改めて気付かされた。頭では分かっていても、実際にやるとやらないとでは実感が違う。この苦労を知り、なるべくスタッフの手間とならぬよう、手続きや準備も念入りに行うよう心がけるようになった。

 そして、そうした気持ちとは別に、純粋に楽しかったのだ。もともと、コミケは中高の文化祭との類似性がよく言われているが、前日設営は文化祭前日の雰囲気に近い。来る祭に向けた高揚感というものは成人後にはなかなか味わえるものではない。

 筆者は成人後に町内会の祭を担当したこともあるが、地域住民や子供に向けた祭ではこうした高揚感は得られず、気疲れだけが残った。やはり、自分たちが楽しむ祭を、自発的に立ち上げていくことがキモなのだろう。コミケ歴四半世紀にして、また新たなコミケの楽しみを知ってしまった。

 前日設営は今後も参加したい。それも今までのコミケの形で。その日が来ることを願ってやまない。

 写真=石動竜仁

この記事の写真(11枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー