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「芸人がYouTubeやるのって嫌だな、と…」 「ラッセンが好き」でブレイクから8年、永野がこじらせていた“自意識”

芸人・永野さんインタビュー #1

2022/01/30

genre : エンタメ, 芸能

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「周りとは違う」感覚の心地よさ

――映画は、どんな作品が好きだったんですか?

永野 まず入り口を間違えた。僕には6個上の兄貴がいるんですよ。僕らの世代ってジャッキー・チェンが流行っていたんですけど、兄貴の影響で強制的にブルース・リーを観させられて。兄貴がDIYでヌンチャクみたいなのを作って、無理やり僕が習わされるみたいな。そこから周りとは違うみたいな感覚が芽生えて。でも、そこに心地よさを感じている自分もいましたね。

 

――映画とか音楽って、“こじらせ”を加速させますもんね(笑)。

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永野 そうそう。学生時代って、洋画を観ている人に対して「すげー!」みたいな雰囲気があったじゃないですか。だから、観てもいないのに、「ああ、あれね……観たよ」とかたくさん嘘をつきました(笑)。ジム・ジャームッシュの『デッドマン』とか、まるで良さがわからなかったけど、一緒に観に行った友だちが「わかんなかった」って言うもんだから、「俺はわかった」って平気で嘘をつきましたね。僕は宮崎県出身ですけど、ひねくれていたから、変なものへのアンテナだけは高かった。アレックス・コックスの『レポマン』とか、スティーブン・キングが監督をした『地獄のデビル・トラック』とかに魅了されて。もちろん、(クエンティン・)タランティーノも好きでした。で、とどめがジョン・ウォーターズの『ピンク・フラミンゴ』。すごい感動して、「こんなに何やってもいいんだ」って思っちゃったんですよ。

 

――『ピンク・フラミンゴ』はカルトムービーの金字塔……永野さんが、なぜ“孤高”かつ“カルト”な芸人になったのか分かったような気がします(笑)。

永野 上京すると、サブカル的な趣味を持っている人がたくさんいて、宮崎では浮きまくっていた自分が、あんまり浮かなくなったのもうれしかったですよね。だから、わかってくれる人がそれなりにいると思って、芸人になってからも、好きなことばかりやっていたんですよ。でも、30歳を超えて、ある程度おじさんの年齢になると、ズレを感じてきて。後輩の芸人に、「ピンク・フラミンゴは最高だから、芸人だったら観たほうがいい!」ってすすめても、後日、「気持ち悪かったです」とか言われて(苦笑)。そんなことが繰り返されるから、「もう言うのをやめよう」って。ずっと封印してきたのは、そういう理由もありますね。誰もわかってくれないけど、俺は好きなことやって、負の感情を表現してやるって。そしたら、いつしか「永野はカルト芸人だ」とか言われ始めて。

ラッセンのネタの根底にある「負の感情」

――自覚はなかったんですか?

永野 ないです、ないです。僕は、オリジナリティこそが一番すごいって考えていたから、芸人としてネタをするときも真っ先にそこを考えちゃう。ウケるとかウケないとかじゃなくてオリジナリティ。