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――その考えが“孤高”すぎます(笑)。

永野 よく言えばですけどね(笑)。でも最近気付いたのは自分ほどのサンプリング芸人はいないということで、オリジナリティはゼロでした。僕らが若い頃って、当時の芸人はみんなダウンタウンさんの影響を受けていた。右も左もダウンタウンさんになりたい芸人ばかりだった。最初はツッコミがいた方がいいと思ったんですけど、自分は関西人じゃないのと、東京の人間のつっこみが苦手で、1人でやった方が早いと思ってピン芸人になりました。無駄に自信だけはあったから、「俺がお笑いをやったらとんでもないことになるんだろうな」って思っていたけど、一向に売れない。完全に井の中の蛙。でも、俺はすごいやつなんだって言い聞かせながら、全然ネタを作らない日々が続いてましたね(笑)。カルトとか地下芸人とか言われていたけど、自分ではそんな風に思ったことはなくて、“生々しいだけ”なんですよね。自分が面白いって思うものに対して忠実だっただけ。

 

――そういう考えだった永野さんがラッセンのネタでブレイクする。何か心境に変化があったのでしょうか?

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永野 僕は2014年に40歳を迎えたんですけど、さすがに売れていないこの状況に「やばい」と感じたんですよ。売れなきゃいけないと思って、「こんな一発屋いそうだな」って考えたのがラッセンのネタ。そのネタが話題になってブレイクにつながったので、「俺って本気出したら3か月で話題になるじゃん! ヤベーじゃん!」って自画自賛です(笑)。でも、ラッセンのネタ自体は、やっぱり負の感情が根底にある。たまたまドン・キホーテに行ったら、大麻の絵の隣にラッセンの絵が飾ってあって、「何だよこれ」って。完全に負の感情から生まれている。そういう考えにいたってしまうのは、完全にニルヴァーナのせい。だから、明るい奴を見ると、なんか幼少期にとんでもなく悲惨なことがあって、ああやって明るい顔して笑ってんだなって思う。とんでもないショック体験があったんだろうなって。

 

「ずっと明るい人は信用できない」

――考えすぎですよ!(笑)

永野 ずっと明るいとか信用できないんですよ。僕自身、ラッセンで売れさせてもらって、今もいろんなことをさせていただいていますけど、おばあちゃんとか一般の人から見たら、「最近あのラッセンのやつ見ないじゃん」ってなる。でも、そんな自分が好きなんです。リンプ・ビズキットと同じ道たどってんなと思って(笑)。調子に乗った奴って、一度、きちんと消えないといけない。キープしてるバンドって、結構つまんないじゃないですか。ずっと変わらないとか、ずっと明るいままって変なんですよ。そういう奴に、疲れが見え始める瞬間に期待しているんですよね。がっつり落ちた人って信用できる。僕は、調子に乗ってちゃんと消える奴が好きなんですよね。

写真=鈴木七絵/文藝春秋

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