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 さらに「イヌキ」ということで注目すべきは、その外観です。

 第1章でも指摘した通り、ドンキ浅草店は、ほかのドンキとは違いドンキらしからぬシックな外観を持っています。見ようによっては大理石風の外観だと見ることもできるのですが、かつての大勝館の外観と、この外観はかなり似ているのです。

ドン・キホーテ浅草店(著者撮影)

 それだけではありません。

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 その写真を見ると大勝館の入り口は、現在のドンキ浅草店と同じように交差点の角に面しており、上映中の映画に関係のある人形が大きく取りつけてありました。たとえば、『キング・コング』が上映されたときは、片手に美女を掴んだキングコングの置物が入り口のすぐ上に鎮座しています。

 ここで私などは、かつての大勝館の入り口とドンキの入り口が非常に似ていることに想いを馳せてしまいます。交差点に面して開かれた入り口と、その上に鎮座するオブジェ……。かつて、キングコングなどが置かれた位置には、現在、ドンペンのオブジェが取りつけられています。巨大猿から巨大ペンギンへ。

 重要なのは、じつはこの入り口の類似性、ただのこじつけではないということ。ちゃんとしたロジックがそこには存在します。

角地ドンキと江戸東京の記憶

 大勝館とドンキ浅草店の入り口はどちらも交差点に面して、角に入り口があり、そこを目立つようにしています。これは、「隅切り」と呼ばれる設計方法で、角地に面しているいくつかのドンキ(以後、「角地ドンキ」と呼びます)ではこの隅切りを入り口にしています。ドンキ浅草店をはじめ、新宿歌舞伎町店や、池袋駅西口店、蒲田駅前店、藤沢駅南口店などの店舗がこのような入り口を持っています。もちろん、ドンキ全店を対象にすればほかにも多くのタイプの入り口があるのでしょうが、私がこの角地ドンキを取り上げるのには理由があります。