1ページ目から読む
4/4ページ目

 この頃、列車名は「愛称+数字+号」「第+数字+愛称」「愛称のみ」が混在しており、特急・急行・準急の増発によって列車名は増え続けた。列車愛称は359もあった。

 1968年、国鉄は大規模なダイヤ改正を実施した。昭和43年10月にちなんで「ヨン・サン・トオ」と呼ばれた。この機会に国鉄はすべての列車を「マルス」に対応させるため、列車愛称の大改革を行う。同一路線、区間の列車愛称はなるべく一本化する。定期列車と臨時列車の愛称も区別せず同一とする。そして従来の「愛称+数字+号」「第+数字+愛称」は、すべて「愛称+数字+号」とした。ただし、新幹線のような「下り奇数・上り偶数」は採用されていない。

 こうして「第2あずさ」は「あずさ2号」となり、新宿発と松本発が存在した。狩人の「あずさ2号」は1977年3月の発表だから、「あずさ2号」が走り始めて約10年。すっかり定着した列車名だった。

ADVERTISEMENT

2019年まで運行した「E257系」電車(千葉駅)(2018年撮影)

「あずさ2号」は歌われてから1年半しか走っていない

 ところが新宿発の「あずさ2号」は意外と短命だった。1978年の国鉄大規模ダイヤ改正、昭和53年にちなんだ「ゴー・サン・トオ」で、在来線も新幹線と同じ「下り奇数」「上り偶数」となった。「あずさ2号」は新宿発8時ちょうどから松本発7時35分になった。新宿8時ちょうどは「あずさ3号」になった。歌はロングランヒットとなったけれども、特急「あずさ2号」は歌われてから1年半しか走っていない。

 1988年、「あずさ」のうち新宿~甲府間の短距離列車は「かいじ」として独立した。当初の列車名は、「かいじ+300番台の数字+号」だった。これは乗り間違いを防ぐため。「かいじ1号」と「あずさ1号」になると「1号」だけの印象が強くなる。混同しないように、という配慮だった。実は新幹線の列車名もこの方式で「ひかり」は500番台以降、「こだま」は700番台以降になっている。

 2019年のダイヤ改正で、「あずさ」と「かいじ」の号数は通し番号に整理された。利用者にわかりやすくするためだ。号数は新宿発着時刻の早い順に付けられたから、「2号」は「かいじ」の担当になり「あずさ2号」は消滅した。今後のダイヤ改正でまた「あずさ」と「かいじ」の順序が変われば、「あずさ2号」は復活するかもしれない。しかし新宿発は絶対にない。

 最新の時刻表で、新宿発8時ちょうどは「あずさ5号」だ。「あずささんごう」より「あずさごごう」の方が語呂が良いから、狩人さんに「あずさ5号」としてセルフカバーしてほしいな、と思う。元カレへの思いを断ち切って、新カレと未来へ旅立つ。そんな女性はきっと今もいるだろうし。

写真=杉山淳一