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「あずさ」は新宿と松本を結ぶ特急列車だ。一部は千葉駅または東京駅を発着し、松本から先、大糸線に乗り入れて南小谷駅を発着する。中央本線のエースである。

 最新の時刻表に掲載された「新宿駅8時ちょうどのあずさ」は「5号」である。「2号」は見当たらない。

「5号」より先に発車するあずさは「3号」で、2号が飛んでいる。実はいま、列車の号数は「下りが奇数」、「上りが偶数」になっている。そこで上り列車を探してみると、やっぱり存在しなかった。松本発「あずさ4号」が始発列車になっている。それより早い時間は竜王駅6時58分の「かいじ2号」。

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 特急「かいじ」は、主に新宿と甲府を結ぶ列車だ。由来は甲斐路。「あずさ」が混雑していた区間を補完する役割を持つ。すべて「あずさ」だった頃は、新宿~甲府間が混雑し、甲府~松本間を通しで乗る客が指定席を取りにくかった。そこで新宿~甲府間の「かいじ」を設定して、近距離客と長距離客を分離した。その「かいじ」には「4号」がない。

 なるほど、「あずさ」と「かいじ」で号数を通し番号にしているのだ。これは「あずさ2号」と「かいじ2号」を走らせると、「2号」だけを覚えていた客にとって、乗り間違えやすいからだろう。

8時ちょうどの「あずさ5号」

 そう、乗り間違い防止。これが「新宿発8時ちょうどのあずさ2号」が消えた理由だ。「列車名+号数」は、乗り間違いを防ぐための施策。列車名は「人々に親しんでもらうための愛称」だけではない。号数は「愛称」が多すぎるとかえって困るから設定された。

かつて、特急列車は4本しかなかった

 日本の列車愛称は1929年に始まる。東京~下関間を結んだ特急列車に「富士」「櫻」が与えられた。どちらも1日に上下1本ずつ。翌1930年に東京~神戸間で「燕」、1937年に同区間で「かもめ(実際は漢字)」が追加された。同じ区間で2つの名前がある。当時の特急列車は本当に「特別」な存在で、この4本しかなかった。名前を変えれば乗り間違いを防げた。

 このあと、特急列車の愛称は基本的に「1往復1愛称」が基本となった。戦後の復興、経済成長に呼応するように、特急・急行列車が増えていく。「1往復1愛称」は、指定席の売り間違いを防ぐためにも都合が良かった。しかし、このままではいつか愛称の候補も尽きるだろう。