役そのものになりきる憑依型の北島マヤと、才能を駆使する計算型の姫川亜弓。「天然」と「天才」、同い年の二人の女優が演劇バトルを繰り返す本作には、現在までに30もの劇中劇が描かれている。
オリジナルの劇中劇を描く時は、一場から最後まで、全部台本を書いているんです。「いつか新しい連載をする時のために」と取っておいたお話のアイデアを持ってきて、ここに全部注ぎ込んでいるかたちですね。集英社の頃は怪奇漫画もよく描いていたので、そういったものも手法として取り入れている。「全部入れる!」という感じです。
いい時期に連載を始めることができたなと思っています。趣味と実益を兼ねて舞台をよく観に行くようになったんですが、最初は大劇場のお芝居から入り、串田和美さんの「自由劇場」や創設メンバーの「劇団四季」などを観ていたところ、つかこうへいさんのお芝居がワーッと話題になり、だんだんと小劇場全体が盛り上がり始めた。
例えば、野田秀樹さんの「夢の遊眠社」や鴻上尚史さんの「第三舞台」など。新しくて若い劇団が、演劇の多様性を広げていく姿を目の当たりにすることができ、刺激を受けましたね。私も、私なりの演劇を、漫画の中で頑張るぞ、と。
漫画家が好きになる街、吉祥寺
1978年、27歳で今も暮らす吉祥寺に引っ越し、翌年、仕事場兼住居の一軒家を建てた。
40坪の土地に2階建てで、1階は応接間と10畳くらいの仕事部屋、2階にある4部屋のうち一部屋は、アシ部屋(アシスタントが寝泊りする部屋)でした。吉祥寺に引っ越してからは、編集さんが我が家にカンヅメするようになりましたね(笑)。
この街に住み始めてもう40年になりますが、吉祥寺って漫画家がとっても多いんですよ。楳図かずおさん、『北斗の拳』の原哲夫さん、水島新司さん、大島弓子さんや江口寿史さんもいらっしゃる。漫画家が好きになる街なのかもしれません。飽きないんですよね。
いろんなものが混在していながらも街自体の品が悪くないし、ちょっと歩けば緑もたくさんあって落ち着ける。私は漫画のアイデアを考える場所がたいてい喫茶店なので、遅くまで開いている喫茶店が多いのも嬉しいですね。