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〈福井県・中2指導死〉「孤立感、絶望感を深め…」教師からの厳しい叱責にさらされた生徒が自死を選ぶまで

2022/05/13
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『できなくてすみませんでした』と言うまで終わらない副担任の「指導」

 女子生徒の陳述書によると、彼女は担任と廊下ですれ違っても無視されていた。他の生徒に対して「おまえらがホームレスになろうとどうなろうと関係ねえ」と言い放ったこともある。英語の授業後、「クレイジー」と言われたことがあった。副担任については、女子生徒が宿題を忘れたことを伝えに行くと、机に肘をつき、生徒を斜め下からにらめつけ、「なんで?」を繰り返すといった指導をしていたという。

 指導時に、副担任の目つきがきついことも、女子生徒は証言した。その視線は遺族にも向けられていた。

「息子が亡くなってから事情説明で家に来たときの、副担任のにらみつけるような目は忘れられません。下からにらみつけるようにしていました。私でも怖いと思いました。あの視線を子どもたちに向けたら、本当に怖いんだろうと思います」(母親)

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 宿題の未提出の件では、担任の指導についても報告書は触れている。亡くなる前の3月6日、朝の会の後、担任から宿題未提出で指導を受けた。2時間目ごろに、ヨウヘイさんが保健室へ行き、養護教諭に「学校で嫌なことがあったので早退したい。理由は言いたくない。おばあちゃんに聞いてもらう。頭を冷やしたいので歩いて帰る」と言っていたという。養護教諭は「担任に報告するように」と言った。ヨウヘイさんは担任に言ったが、結局、給食の時間まで保健室で過ごした。

仏壇で線香をあげるヨウヘイさん(仮名)の母親

 ちなみに、1年次には欠席が1日、保健室への来室は2日だった。しかし、2年次には、欠席が6日。保健室への来室は10日と増えていた。保健室の利用が5倍に増えているが、家族には報告されていない。

 11月には、ヨウヘイさんは副担任に土下座をしようとした。課題未提出のため、副担任はヨウヘイさんを別室に呼んで未提出について問いただした。ヨウヘイさんは遅れた理由について、生徒会や部活動のため、と答えている。副担任は「宿題ができないなら、やらなくていい」と言った。すると、ヨウヘイさんは「やらせてください」と言い、土下座をしようとした。

「なんでできてねえんや!」と怒鳴る担任

 不適切な指導は副担任ばかりではない。報告書では、16年10月の「能楽の里池田マラソン」での担任の指導についても触れている。

 ヨウヘイさんは2年生の後期に、生徒会副会長に選任された。生徒会の指導は担任が担当。2年生の10月、マラソンが開催され、ヨウヘイさんは伴走ボランティア実行委員会の委員長になっていた。大会当日の挨拶の準備が遅れていたことを理由に、大声で怒鳴られた。目撃した生徒の証言では、身震いするくらい怒っていたとされている。

 また、前出の女子生徒の陳述書によると、 マラソン大会の伴走ボランティアでも、ほとんどの場面でヨウヘイさんは担任から怒られていた。とりわけ本番の2週間前ごろからひどくなり、「何も決まらないのはおまえのせいや!」などと怒鳴られていた。2、3日前には、理由はわからないが、担任は突然「もう解散や!」と怒鳴っていたという。