家庭環境に恵まれない子どもたちの「故郷」を作りたい
菅原 私たち夫婦は車中泊の旅が趣味なのですが、ゆくゆくはタイニーハウスやハーブ農園がある小さな村のような場所を作りたいと思っています。
そしてその場所を、家庭環境に恵まれない子どもたちの「故郷」と呼べるものにしていきたい。子どもたちが自由に出入りして、無料で遊んだり、勉強できたりする場所にしたいですね。
――無料だと運営が大変では?
菅原 確かに大変かもしれません。でもこの村は、無料だから意味があると思っています。
というのも、私が子どもの時は母が忙しかったので、遊んだり話したりする相手は習い事の先生が多かったんです。でも、子どもながらに「お金を払っているから先生は私の相手をしてくれるんだ」と思っていました。
これは余談ですけど、いつだったか、歌のレッスンに行く時、月謝の入った封筒を自宅に忘れてしまったことがありました。そのままレッスンに行ったら、「お金を持っていないなら今日は帰りなさい」と言われてしまって。ちょうど先生に聞いてもらいたい話があったのに、すごく悲しかった記憶があります。
だからこそ私が作る村は、子どもたちがお金のことを気にせずに楽しめる空間にしたいんです。そうじゃないと、心から安心して過ごせないと思うから。
「実家だと思っていつでも遊びにおいで」と言ってくれる人も
――過去の自分と同じような子どもたちを救いたいという思いがあるのですね。
菅原 私は血のつながった家族との絆は結べませんでした。でも大人になってから、夫をはじめ、血のつながりがない人とたくさんの絆ができたんです。
実家を飛び出して住む場所に困っていた時は、不動産会社で働く知り合いが、保証人のいない私でも家を借りられるよう取り計らってくれました。
車中泊の旅で知らない土地に行った時は、私のことを娘のように可愛がってくれる老夫婦と出会いました。「実家だと思っていつでも遊びにおいで」と言ってくれる人もいて、一度実家を失ったはずの私は、いまでは全国に“実家”ができたんです。
私はそうやって、血のつながりのない人たちに支えられて生きてきた。だから今度は、家庭環境に恵まれない子どもたちに「血のつながりがなくても、お金のつながりがなくても、愛情を与えてくれる大人がこの世界にはいるんだよ」というのを伝えていきたいですね。
写真=菅原恵利さん提供
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