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噴火による被害

 もしも富士山が噴火した場合、どのような被害が予想されるのか触れておきたい。

健康被害

 噴火で放出された火山ガスは、濃度が高い場合には人体にきわめて有毒であり、低濃度でも目の粘膜や上気道を傷める可能性がある。また、火山灰の小さな粒子は、目・鼻・ノド・気管支だけでなく肺の肺胞に達する危険がある。ぜんそくや気管支炎、肺気腫など肺に問題を抱える人や、深刻な心臓疾患のある人はとくに注意が必要だ。

 十勝岳の噴火(北海道、1988~89年)では、亜硫酸ガスを主体とする大気汚染のために健康障害が発生した。有珠山(北海道、2000年)の噴火では堆積した火山灰が飛散し、住民が呼吸器の異常を訴えた。雲仙・普賢岳の噴火(長崎県、1991年)でも眼やノドの症状を訴えた住民が多かった。昭和新山噴火(北海道、1943年)やカリブ海モントセラト島(イギリス海外領土)のスフリエール火山噴火(1997年)では乳幼児が窒息死した例が報告されている。

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交通途絶

 火山灰が1ミリ以上積もると自動車の速度は30キロ程度、5センチ以上積もると10キロ程度まで落ちる。10センチ以上積もると走行ができなくなる。物流が止まり生活にも支障が出るだろう。2011年に起きた霧島連山の新燃岳の噴火では、宮崎県の都城市などで数ミリから数センチの火山灰が積もっただけで、交通事故が相次いだ。

 鉄道のレールは、車両を支えるだけでなく軌道回路として安全確保などさまざまな情報伝達にも使われている。その上に火山灰が0.5ミリ積もるだけで、列車の運行システムなどに障害が起きる。鹿児島市では桜島の火山灰の影響で、鉄道がたびたび運休になる。富士山の噴火で溶岩流や土石流が静岡県側に流れ出せば、東海道新幹線と東名高速道路が寸断され、経済的な影響は計り知れない。

 航空機のエンジンが火山灰を吸い込むと、停止するおそれがあるため首都圏の空港は閉鎖されるだろう。滑走路は0.2ミリから0.4ミリの降灰で、滑走路上の指示表示が見えづらくなり、1~4ミリで閉鎖される。火山噴火による航空機のトラブルは、世界各地でたびたび発生している。