8月12日、格安ステーキ店「いきなり!ステーキ」などを運営するペッパーフードサービスは、創業者の一瀬邦夫社長が辞任することを発表した。同社は近年、業績不振にあえいでおり、同日に発表された2022年12月期の業績予想では最終損益を10億9000万円の赤字としていた。業績不振の裏で何が起こっていたのか——。「週刊文春」の記事を再公開する(初出:2022年6月23日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)。

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 格安ステーキチェーン店「いきなり!ステーキ」が直営の全店舗に対し、「料理用ビニール手袋は片手だけ着用して調理するように」という指令を下していたことが「週刊文春」の取材でわかった。

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 近年、「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービスは業績不振にあえいでいる。

 1号店のオープンは2013年。立ち食い格安ステーキという業態がヒットし、数年で全国に約500店舗を構えるまでに急成長を遂げた。しかし、過剰出店で2019年には営業赤字に転落。さらにコロナ禍が追い打ちをかけて3期連続の赤字に陥った。

安さと“立ち食いスタイル”で人気に

「2020年には別業態の『ペッパーランチ』の売却、不採算店舗の閉店、希望退職者募集とリストラを敢行。215店舗まで規模を縮小しました。2022年12月期は売上高が前期比11.1%減の168億4100万円、営業損失を1億6500万円と予想しています」(経済誌デスク)

 同社を巡っては、小誌が今年2月10日号で「いきなりステーキ」の商標権を取引先企業に“担保”として移転していたことを報じている。

 そんな苦境の「いきなり!ステーキ」で、“手袋は片手だけ令”がいきなり下されたのは2021年9月のこと。現役アルバイトが戸惑い気味にこう漏らす。

「(片手だけに着用する)理由は『手袋の価格が高騰したから』。経費削減とはいえ、不便ですよ……」

 2018年から2022年まで勤務したペッパーフードの元社員Aさんもこう語る。

小誌の取材を受けるペッパーフードの元社員Aさん

「衛生上、手袋をしていない手で食材は触れない。当然、片手だと時間がかかります。マニュアルでは『ランチは10分、夜は15分で提供すること』とありますが片手では無理。だから私はやむを得ずピーク時は両手に手袋をしていました」

 すると――。

「監視カメラで調理場を見ていた上司から『片手がルール。外しなさい!』と電話がきた。ピーク時だったので『やれるもんならやってみろ!』とつい言ってしまった。後日、命令に背いたという理由で改善指導書を出されました」(同前)