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「今度やったら逮捕しますよ」愛護団体のクレームで名物「ヘビ女」を失った見世物小屋の“驚きの秘策”

見世物小屋のリアル #1

note

――興行主はあくまで大寅興行社で、プロデュースや演者は劇団ゴキブリコンビナートということですね。

Dr.エクアドル そうなります。祭りを仕切っている人への体面は、あくまで大寅興行の小屋ということになります。小屋が始まると基本は我々が仕切るような形になりますが、大寅さんもずっと立ち会ってくれるので、いろいろ助けてくれますね。

ゴキブリコンビナートがプロデュースする見世物小屋 ©伊藤弘二

 ちょっと席を外すときに呼び込み役を代わってくれたり、いたずらな子どもらが悪さすると叱ってくれたり。

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「ヘビ女」の代わりに現れたのは…

――ゴキブリコンビナートさんが出演していたあたりから、見世物小屋では定番だったヘビを使った芸がなくなっていますね。当時ネット上でもその背景が語られていましたが、改めて経緯をお聞かせください。

Dr.エクアドル 動物愛護団体に抗議され、爬虫類と哺乳類を使った芸ができなくなったんです。博多の祭りで準備していたときでした。動物愛護団体の女性が、小屋へおまわりさんを伴って押しかけてきたんです。その時ちょうど、動物愛護法の改正があってですね、これまでは獣だけだったのが、新たに爬虫類や鳥類に関しても、殺傷に関する刑罰が重くなった。記憶だと、2013年頃です。

 法律をたてにされると、こちらとしては太刀打ちできない。正直お巡りさんは、見世物小屋の演目をやめさせることにそんな乗り気っぽくもなく、連れてこられたから仕方なく……という雰囲気を感じましたが。まあ、法律は法律なんでね。今度やったら逮捕しますよと、言質をとられてしまった。

――ヘビを食べるヘビ女が消えた後は、小屋で虫を食べる「ヤモリ女」を見ました。

Dr.エクアドル 抗議されてから改めて調べてみると、虫なら法的に問題がないらしいとわかったんで、虫を食べるヤモリ女に変更したんです。「殺虫剤で蚊を殺してはいけない」とかはできないでしょうし。

 ただ博多の時は、ヘビじゃなくてニワトリを食いちぎる芸だったかな。結果的に、その後のヘビもできなくなったわけですが。で、ニワトリをやろうとしていた本番前日に小屋に押しかけられたので、急遽会議して。じゃ虫にしよう!と決めました。

生きた虫を食べるヤモリ女 ©伊藤弘二

 ヤモリ女を演じることになった役者がどんな心理状態でOKを出したかはわかりませんが、変更を伝えると「はい、大丈夫です」と即答してくれました。

ヤモリ女が食すミールワーム ©伊藤弘二

 ちなみに、僕はできないですよ。虫食えないんで。ミールワームを選んだのは、価格もお手頃で、一番管理されているんじゃないかなと思ったから。採ってきた虫とかはちょっとね。