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トレンド入りした「#GLAYの美しい日本語選手権」

 いざ開幕、ライトが舞台と客席を照らし出したとたん、ホール全体がGLAYチョップでうねる! ファンたちが風になったり、波になったり、花として咲いたりするように、サウンドとリンクして躍動していた。

 JIROが「かなりレアな選曲」と言う通りアルバム曲が多かったが、だからこそ、改めてGLAYの歌には季節があると感じたセットリストであった。GLAYは冬のイメージがあったが、いやいや夏もいい!

JIRO ©岡田裕介

 激しいサウンドでも、どこかから風鈴の音も同時に聴こえてくるような、なんとも不思議な懐かしさと郷愁が。「summer FM」「風にひとり」「月の夜に」など、夜の月明かりが見えたり、大地にそよぐ草がふっと浮かんだりする。ライブの数日後、「#GLAYの美しい日本語選手権」がトレンド入りしていたが、まさにカギはそこだろう。季節の移ろいや匂い、揺れる感情を、曖昧で繊細な部分も大切に大切に風景化しているイメージだ。日本だからこそ描ける「中間色の彩り」が心に響くロック。

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「どんだけ練習してもTERUみたいな声は出ない」

 9曲目に突然、あの心を揺さぶるイントロが。「HOWEVER」である!

 そういえばこの曲も「都忘れ」とともに、「夏音」がエモーショナルな歌。しかし首をひねらずにはいられない。TERUの喉はどうなっているのか。ずっと連続で歌いっぱなし、しかも何度も「オーサキャーゥーッ(大阪)!!」と脳天から出るような金切声で叫んでいるのに、使うほどツヤが出てくる漆の器の如し。

〈言葉では伝える事が どうしてもできなかった 優しさの意味を知る〉(作詞・作曲 TAKURO)

 この日の「HOWEVER」は、彼の喉に何か特別なシステムがセッティングされたのかと思うほど、どこまでも伸び、感情に溢れていた。

 あのロックのカリスマ、氷室京介をして「モノマネで似てる人が1人もいないし唯一無二の声だよな。どんだけ練習してもTERUみたいな声は出ない」と言わしめた声の威力。同時に何かのコメント欄で見た「なんか聞いてると安心する声」という表現もしっくりくる。いろいろと超越しているのだが、それでも近くに感じて安心する素朴さが本当に不思議だ。