「私たちが東京女子医科大学病院で働くことの意味」
「“クビ”になることも想定して、7人の教授らは質問書に名前を記載したと思います。その覚悟に勇気をもらった教職員は多いはずです。保身で理事長に密告する人間もいる状況で、誰が敵で味方なのか、分からなくて疑心暗鬼になっていましたから」(60代・外科医)
関係者によると、質問書に賛同の署名をしたのは約400人だという。医師をはじめ、看護師や薬剤師、技師など、不可解な経営方針に疑問を抱いている診療現場の人々だ。
事前に情報が漏れるのを防ぐため、質問書はごく限られた教職員のみに回覧されたが、わずか数日でこれだけの署名が集まった。危機感が高まっている表れだろう。
「質問書」の冒頭に題された、“私たちが東京女子医科大学病院で働くことの意味”には次のように記されていた。
〈本学は吉岡弥生先生の掲げた「至誠と愛」の理念を元に、120年以上の長きに渡り、病に苦しむ患者に寄り添って参りました。「臨床の女子医大」と言われるが如く、他院が断るような難治性の重症例に対し、臓器移植や内視鏡手術、また分子標的薬や新しい抗がん剤等を駆使した先進治療を施し、文字通り医療における最後の砦として幾多の患者を救命してきました。〉
「女子医大から優秀な人材が相次いで立ち去るようになりました」
日本の医療をリードしてきた女子医大の医師としての誇りが漂うが、その後に続くのは悲痛な告白だった。
〈この女子医大から、優秀な人材が相次いで立ち去るようになりました。その職種は医師だけに限らず、看護師や技師などチーム医療の根幹を成す重要なスタッフが多数含まれております。私たちは今、これまで誇りを持って提供してきた医療の質量を不本意ながら下げざるを得ない状況に直面し日々葛藤しております。〉
なぜ、優秀な医師や看護師、技師が次々と辞めていったのか、「質問書」は言及していない。だが、岩本理事長による不可解な大学運営に起因することは明白だろう。
「現状報告」の項目では、女子医大の凋落というべき現実が示されていた。