「単なるひったくり犯だと思っていたので、ちょっと油断していたのかもしれません。上に乗って押さえつけていた他の男性が体勢を崩し、佐藤容疑者が中腰になった瞬間、僕の右脇腹にスタンガンを当ててきました。感じたことのない痛みが身体中を走って、訳が分からず、頭が真っ白になりました。とはいえ、気絶するほどの衝撃ではなかったので、僕も防衛本能ですぐにまた取り押さえました。ただ、スタンガンを捨てさせようとしてかなり激しくもめたんです。ニュースの映像で佐藤容疑者の顔に傷があったのは、その時できたものだと思います。その後、やっと抵抗をやめて『すいませんでした』『ごめんなさい』と何度も繰り返し言っていました。警察が来ると、正座をして身体検査も言われたままに対応していて、やっと観念した様子でした」
スタンガンで経験したことのない痛みが走った
佐藤容疑者が現行犯逮捕された後、藤本さんは病院へ運ばれた。スタンガンによる電撃傷と診断され、全治10日の痛みに今も苦しんでいる。
「右腹に擦り傷程度ですが傷は残っています。痛いというか、体の内部に違和感がずっと残っている感じです。骨がうずくというのでもなく、体の奥からなにかが突き上げてくるような鈍痛とでもいいますか。もう何年も前にやめちゃったけど、総合格闘技をやっていたので打撃の痛みなら経験あるんですが、スタンガンを当てられた瞬間のあの激痛と、その後からくる体の内部からの刺激、そしてあのバチバチッという音は、日にちが経って、冷静に思い返してみても体験したことないですね」
渋谷は防犯カメラも多いから、現場で取り押さえなくてもどうせ犯人は捕まっていたでしょう、と藤本さんは最後に言った。ネット上や目撃者からは藤本さんらの行動に賞賛の声が集まっている。
一方、佐藤容疑者は、調べに対して「私がしたことに間違いありません」と容疑を認めており、凶器となったスタンガンについては「護身用で持っていた」と説明。警視庁渋谷署は、犯行の動機と被害女性との関係を調べている。強盗目的のために、スタンガンを所持していた訳ではないのだろうか。事件の真相解明が待たれる。
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