「なんで車にそこまで?」

 世間からの驚嘆の声も、好事家の耳には賞賛と響く。他人には理解しえないコダワリに人生を賭ける、カスタムカーオーナーの酔狂な実態とは⁉

 今回は、公務員を辞め「車屋さん」として夢を叶えた後藤真吾さんをご紹介。

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茨城県でカーショップ「S.A.M WORKS」を経営する後藤真吾さん

安定した道を捨てて

 このダッジ・チャージャーは、2年ほど前に、仕事を辞めたのを機に買った車なんです。それまでは治安を守る公務員の立場ということもあって、イメージ的にこういう車に乗るわけにはいかなかったんですよね。

 それで、今は茨城県で車両販売やカスタムを手がけるお店をやっています。なので、この車は、一応お店の看板車でもありますね。やりたいことを思い切り詰め込んだ、思い入れの強い車なんです。

独立を機に先輩から譲り受けたというダッジ・チャージャー。ハイドロ機構により車高を限界まで落とした状態だ

 もともと、幼い頃から「車屋さん」になるのが夢だったんですよ。父が車好きだったこともあって、洗車を手伝ったり、オートサロンに連れて行ってもらったりと、車に囲まれた環境が自分にとって一番自然なものでした。

 学生の頃も「車屋さん」への憧れは残っていましたが、具体的にどうすればいいのかもわからず、そのうち治安を守る仕事に興味が出てきて。頑張って勉強して、公務員として就職が決まったときには両親も喜んでいましたね。

内装は純正を基調にしており硬派な印象

 ただ、仕事にやり甲斐を感じる一方で、入ってすぐに「この仕事だと乗りたい車に乗れないじゃん!」と気づいてしまって。当時は日産のフーガやBMWの5シリーズなんかに乗っていましたが、派手にカスタムするわけにもいかず、ずっと「自分の好きなように弄りたい」と悶々としていましたね。

 その気持ちを抑えきれず、とうとう仕事を辞めて。もちろん親や周りは大反対でした。「安定した公務員の道を捨ててまでやることじゃない」と皆に言われましたね。

夢だったカーショップを開き、充実した日々を送っている

 でもやっぱり、一度きりの人生ですから、好きなことを楽しめないまま終わりたくないと思ったんですよね。もちろん実際にやってみると、設備を整えたり、大変なこともありましたが、色んなつながりに救われて、毎日楽しく仕事ができています。お客さんの声を聞きつつ、仲間と試行錯誤しながら車を仕上げていく時間が、自分にとっての生きがいですね。

 今では周りから「お前はこの道に進んでよかったな」と言われるようになり、実際に車を注文してくれる元同僚もいて、これでよかったんだと思えるようになりました。忙しくても、ストレスフリーに生きている実感がありますね。

 親にも心配をかけましたが、今はショップのSNSをいつも見てくれていて、会ったときにも笑顔が増えた気がします。少しは認めてもらえたのかなと、こっちも胸をなで下ろす気持ちですね。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。