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《「アングロサクソン的なもの」が破綻した後に「ロシア的なもの」が…》E・トッド氏が予言する“新しい社会”

《「アングロサクソン的なもの」が破綻した後に「ロシア的なもの」が…》E・トッド氏が予言する“新しい社会”

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 トッド 一言だけ言葉を挟ませて下さい。佐藤さんの話を聞いて感動しています。私もヴァルダイでのプーチン演説に注目していて、その内容に共感するものがあったからです。少なくとも「プーチンは狂っている」と繰り返すだけの西側メディアは、まずはこのテクストをきちんと読むべきだと思います。

ウクライナ侵攻を理解するにはプーチンの思想を知ることが重要だ ©時事通信社

プーチンのヴァルダイ演説

 佐藤 賛同するかどうかは別にしても、プーチンの内在論理を理解するためには必読のテクストですね。

「第三次世界大戦はもう始まっている」とトッドさんは早くから指摘していましたが、実際、9月末から、ロシアにとってウクライナ戦争の目的が明らかに変化しています。以前は「ロシア系住民の保護」と言っていたのが、「ゼレンスキー政権は傀儡にすぎず、主たる敵は米国を中心とする西側連合だ」と明言しています。つまり、プーチンの心のなかではすでに“第三次世界大戦”が始まっているわけです。

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 ヴァルダイ会議でプーチンはこう述べています。

〈今起きていることは、例えばウクライナも含めて、ロシアの特別軍事作戦が始まってからの変化ではありません。これらの変化はすべて、何年も長い間、続いています。(略)これは世界秩序全体の地殻変動なのです〉

〈ソ連の崩壊は、地政学的な力のバランスも破壊しました。欧米は勝者の気分になり、自分たちの意志、文化、利益のみが存在する一極的な世界秩序を宣言しました。

 今、世界情勢における西洋の独壇場は終わりを告げ、一極集中の世界は過去のものになりつつあります。私たちは、第二次世界大戦後、おそらく最も危険で予測不可能な、しかし重要な10年を前にして、歴史の分岐点に立っているのです〉(プーチン発言はいずれも佐藤優訳)

 つまり、ウクライナでの軍事衝突自体は、表面的な現象にすぎず、いま起きていることの根源はもっと深いところにある、とプーチンは見ているわけです。

(通訳・堀茂樹)

歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏、作家の佐藤優氏、慶應義塾大学教授の片山杜秀氏の鼎談「ウクライナ戦争の真実」の全文は、「文藝春秋」2023年1月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

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ウクライナ戦争の真実
《「アングロサクソン的なもの」が破綻した後に「ロシア的なもの」が…》E・トッド氏が予言する“新しい社会”

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