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 その役に共感できるところを見つけるというか。とにかくひどいヤツなんだけど、そういう性格になってしまった背景を考えると、共感できる部分もなくはないなと。そうやって少しずつ理解していきました。

 あとは開き直りですね。演技だからこそ、普段なら共感できない役や理解できない役だってできる。それもお芝居の楽しみ方のひとつだなって。つらかったけど、『野ブタ。』を通じて演技の幅は広がりましたね。

©文藝春秋

出産後に『千と千尋』を観て“気づいたこと”

――プライベートでは、2021年末に第1子をご出産されたそうですね。

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 そうなんです。ちょうど1歳になったばかりで、すごくかわいい。だけど、とにかく目が離せない! 

 妊娠・出産前からお仕事で“ママ”を演じることは何度もあったし、姉や友達の子どもと接する機会も多かったから「子どもができるってこんな感じなんだろうな」と想像はしていたんですけど……。想像よりはるかに大変でした(笑)。

――子どもが生まれてから『千と千尋』の見方に変化はありましたか。

 昔は千尋視点でしか観ていなかったから、湯婆婆は「怖い」存在だったけど、今は坊を溺愛する姿に「わかる!」と共感してしまいます。

 また、千尋のお母さんに対しては「なんで千尋に対してそっけないんだろう、千尋がかわいそう」と思っていたけど、今なら「日常の一部を切り取っているだけなんだろうな」「私だって四六時中ニコニコは無理だもんな」と裏側もイメージするようになりました。

――『千と千尋』は2022年に橋本環奈さん、上白石萌音さんのダブル主演で舞台化もされましたよね。

 舞台「千と千尋の神隠しSpirited Away 」でも新しい発見がありましたね。演じているのは同じ「千尋」なのに、橋本環奈さん、上白石萌音さんの「千尋」はものすごく可愛くて魅力的なキャラクターに見えました。そういえば、昨年末には、舞台のドキュメンタリー番組『もうひとつの千と千尋の神隠し〜舞台化200日の記録〜』(NHK BS4K)のナレーターを私が務めたんですよ。

 一時期は千尋であることにモヤモヤしていたけど、私のお仕事の幅を広げてくれたのは千尋です。節目節目でこうやって取材していただく機会もありますし。やっぱり私の代表作は『千と千尋の神隠し』なんですよね。

『千と千尋の神隠し』より

撮影=石川啓次/文藝春秋