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畑で育った大きな大根を…「よいしょ」102歳でも一人暮らしするおばあちゃんの“年の瀬の過ごし方”

畑で育った大きな大根を…「よいしょ」102歳でも一人暮らしするおばあちゃんの“年の瀬の過ごし方”

『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』より#1

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル, ヘルス, 読書, 社会

note

 昼休み、校舎の脇の日だまりに長椅子を出して、子どもたちを座らせるの。順番に爪を切って、髪をとかして、鼻水を拭いてやるのが日課でした。親はその日をどう生きるかで精いっぱいの時代じゃったから、子どもの身の回りのことを気にかける余裕なんかなかったけえねえ。

 きょうだいが多いし、親は必死で働いとるし。当時の子どもは親に甘えることができんかった。だからね、一人一人に全力で愛情を注ぎましたよ。手を握り、頭をなでてやるうちに向こうも安心して体を寄せてくるの。いとおしかったです。

 56歳で退職したんですが、きょうは教え子が奥さんと一緒に訪ねてきてくれました。教え子って言うても、もう80代。でもここに来たら小学生の男の子に戻るんですね。

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 家庭科でパンツを縫ったことがあったんですが、その子はええ具合に仕上げられんかった。でも根気強く何とか形にしてね。苦労したことが子どもの糧になります。私も「できたできた」って一緒に喜んで。頑張ったことを褒めたもんです。その子もよく覚えとってね。思い出話で盛り上がりました。

苦労のない人生はつまらんです

【13日】

 大根が畑にたくさんできています。昔のように漬物なんてしやせんし、食べる分だけ抜くんです。よいしょ。本当に大きな大根でね。おばあさんじゃあ抜けんの。うちに来ちゃった人に「抜いて持って帰って」って言うんじゃけど、上手に抜けんから先っぽが折れてしもうて。畑に残った先っぽをおばあさんはいただきます。

 

【16日】

 京都の本願寺さんから記者さん(浄土真宗本願寺派の機関紙「本願寺新報」の記者)が取材に来られました。100歳のおばあさんが毎晩大きな声でお経をあげておるからでしょうかな。ようけ写真を撮ってもらって。飾ったところでぼろが出るだけ。ありのままを見てもらいました。

 

【18日】

 正月には早いけど干していた黒豆を炊きました。黒豆は「苦労豆」。苦労しますようにと願って黒豆をいただくんです。苦労することで見えたり感じたりすることもあるでしょう。どう乗り越えようかって考えますもんね。

 

 苦労のない人生はつまらんです。なんちゃって。口ばかり達者でございます。