広島県尾道市の山間の町に暮らす、102歳の石井哲代さん。近所に住む親戚や知り合いに支えられながらも、畑仕事と一人暮らしを続けている。

 ここでは、日々「私らしさ」を忘れない哲代さんの上手な生き方を集めた『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』から一部を抜粋。2021年11月に綴られた日記と、中国新聞の記者が見つめた哲代さんの姿を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む

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終活も明るくチャーミングに

【1日】

 

 この写真、誰か分かる? 80歳の頃の私でございます。この時はね、大通寺さんでお葬式があって弔辞を読むっていうので美容院で髪をセットしたの。それで誰かが写真を撮ってくれちゃってね。黒い服も着とるし、ええ写真じゃから遺影にしようと思うて額に入れたんです。えへへ。

 近頃は生前に用意する人も増えてきましたが、当時は珍しかったと思いますよ。

 今よりちいとは若いでしょう。あれから20年も生きるとは思わなんだねえ。でも、この写真はもう使えませんな。葬式に来ちゃった人が「これ誰ねえ?」って言うてじゃわな。

【4日】

 きょうは弥生さん(坂永弥生さん。哲代おばあちゃんの弟の娘)が来てくれました。しょっちゅう様子を見に寄ってはシーツみたいな大物を洗濯したり、あちこち片付けたりしてくれてんです。きょうは弥生さんが来る前に洗濯しました。できることは自分でやらんとな。

 

 昼からは買い物に連れて行ってもらいました。がっつり肉を食べとうなってなあ。そうしたら鹿児島牛が半額になっとったん。畑に肉はできんから買いましたよ。あとはメザシ。昔は茶色くなったようなものを食べようたけれど、近頃のはおいしそうなですね。

大好物は柏餅

【8日】

 ご近所のよりちゃん(友人の兼久世利子さん)や文ちゃん(友人の寺谷文子さん)がうちに来て一緒に柏餅を作りました。大好物です。庭にええ葉が生えているから、見るたびに食べとうなるん。みんな手が早いからあっという間に出来上がりました。昔は5月5日に柏餅、ひなの節句にはあられを作っていました。そんなおやつが子どもの頃には貴重品でなあ。ほうろくで煎ったあられを紙に包んで、ちょっとずつちょっとずつ食べとりました。

 

【14日】

 金丸先生(金丸純二さん。近所に住む親戚で、哲代おばあちゃんと同じく元教員)と植えたジャガイモがあんまり大きくなっとらんの。金丸先生がひどう心配しとってんですけど、小さくてもジャガイモはジャガイモ。大丈夫です。何年も畑を作りよるけど、うまくいかん時もあります。我流でございますからよう分かりません。イモも大きゅうなりたい時と、そうでない時があるんでしょう。