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マイケル 自分で言うのは恥ずかしいんですけど、昔でいう二枚目、今風にいうならイケメンというだけじゃなくて、ヤキソバンの持っている三枚目的なニュアンスが僕なら自然にできると思った、というお話は聞きました。

 たしかにバラエティーも出ていましたし、僕はそういうノリが嫌いではありません。でもこの時は、事前に僕が勝手なヒーロー像を思い描きすぎていたんですよね。

――焼そばにはソースが必須で、マイケル富岡さんがソース顔だったからオファーがあったという噂もあります。

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マイケル あの時代は、しょうゆ顔、塩顔、ソース顔といった区分がありましたよね。僕は顔が濃くて、“元祖ソース顔”的な言われ方をしていたので、もしかしたらそれもあったのかもしれません。

「心を無にして演じる」しかなかった

――起用されたものの自分の想像とは違ったヒーローに対し、どう取り組んだのでしょうか。

マイケル 果たして自分に務まるのかという動揺から始まったわけですが、撮影中も手探りなんですよ。僕は割と作り込んで役に入るタイプなので、ヤキソバンについてもきちんと理解したい。そこで細かい部分まで監督と話し合いながら進めるんですけど、何が正解なのか不正解なのか、手応えがサッパリわからない(笑)。

 一方で、スタッフさんたちの熱量はすごい。それを目の当たりにして、中途半端ではいけないという思いは強くなるんですが、どう考えても自分的にカッコよくはないんです(笑)。自分が思っていたようなカッコいいヒーローではなかったので、葛藤はありました。

隙あらば「カッコよく」仕上げてやろうと思っていたけれど… ©松本輝一/文藝春秋

――大反響になったCMなのに、実は主役が腑に落ちないまま、撮影が進んでいったものだとは思いませんでした。

マイケル 正直、隙あらば「カッコよく」仕上げてやろうという気持ちも捨て切れていませんでした(笑)。でも制作陣には、完璧なイメージがある。求められるものをうまく演じなきゃいけない、とずっと自分に言い聞かせていましたね。頭の中から、余計な考えを排して……。

――もはや無になって。

マイケル そう! もう、それしかありませんでした(笑)。