そばの仕事は生きるための手段
伊藤店主は横浜市の出身である。「そばは小さい時から身近で好きな食べ物だった」とか。性格はすごく凝り性で、20歳頃からそば屋でバイトする機会が多かったという。
「出前から始まって、機械打ちでそばの製麺も習得するようになった。23歳過ぎて老舗そば屋に就職し、さらに別の仕事を経て30代半ばから本格的にそば打ちの仕事に従事するようになった」という。
どうしてそばの仕事を選んだかを訊ねたところ、「そばの仕事をすることは生きるための手段だった。とにかくがむしゃらに働いた」と伊藤店主はさらっと言う。
自分で店を始めた理由は
自分で店をやることになった理由を訊いてみた。するとその回答はなかなか深い内容だった。そば屋は高級なそば粉や食材、機材、そして技術を使えば、それなりの上質な料理が提供できる。老舗のそば店のように大勢の従業員をかかえて、営業するにはそれなりのノウハウが必要で、伊藤店主はそのあたりは十分習得してきたわけである。
「今の店をやる前まで、接客から天ぷらや和食などの調理、そして製粉から手打ちの技術も学びました。後輩などの指導や店の経営も一通り。とにかくすべてやりましたね」と淡々と話す。
その上で、「自分が持っている今の技術や資本で、どこまで味を追求し高いレベルに持っていけるか試したくなった」というのである。
立ち食いそばくらいの値段で、手軽に手打ちそばを提供したい
そして、「一方で手打ちそばは高級料理の範疇になっており、そば好きの方が気楽に行ける店が少なくなりつつあるのも事実」と店主は言う。
そこで「もし、自分でそば屋をやるのなら、立ち食いそばくらいの値段で手軽に手打ちそばを提供できる店をやってみたい」と思うようになったというわけである。
そうなると、券売機を用意してセルフで提供する今の店のワンオペのスタイルで行くしかないという結論になったという。