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当時のままの状態で保存された車道

 祭畤被災地展望の丘には“対岸に祭畤災害遺構見学通路があります”という看板も設置されていた。早速、車で対岸に向かう。

祭畤災害遺構見学通路の案内看板

 対岸には、被災した祭畤大橋へ向かう当時の車道がそのままの状態で保存されていた。アスファルトがうねるように大きく波打ち、耐えきれなくなった箇所は割れてしまっている。日常に当たり前に存在する舗装路が寸断され隆起している光景は、あまりにも現実離れしており、まざまざと災害の恐怖を見せつける。

 日常が失われるというのは、こういうことなのだ。

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縦横無尽に亀裂が入ったアスファルト

 被災した道路の脇には見学用通路が設置されていて、波打ったアスファルトを間近に見ることができる。息を飲みながら通路を進むと、その先が祭畤大橋だ。先ほど対岸から遠目に眺めていた祭畤大橋が、すぐそこにあった。目の前に広がる壮絶な光景……。橋台から橋桁が落ち、その先でプッツリと途切れている。対岸からは幻想的にさえ見えた光景だったが、いま目の前にあるのは、非常に厳しい現実だった。

目の前でプッツリと途切れた橋

 阪神大震災など過去の震災は、道路設計に大きな教訓と影響を与えてきた。特に橋は耐震設計が必須となり、耐震設計されていない橋には後付けで落橋防止装置などの耐震装置が取り付けられた。そうした対策によって、従来に比べて被災の程度を軽減させることが可能となったのだ。しかし、災害を100%防ぐ方法は存在しない。

 自然災害では、想定外の事態が必ず発生する。そんな時、迷うことなく自分や周囲の人々の命を守る行動が取れるだろうか。また、想定外を少なくするためには、どうすればいいのか。祭畤大橋を眺めていると、そんな思いが湧いてくる。

 祭畤大橋は岩手・宮城内陸地震の災害遺構であると同時に、現実離れした幻想的な光景でもある。ぜひ一度、訪れてほしい道路スポットだ。そして、訪れた際に見落とさないでほしいポイントがもう一つある。