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見落とさないでほしいもう一つのポイント
現在の国道に架かる2代目祭畤大橋から真下を見ると、はるか下に古くボロボロになってしまっている橋が見える。これは、旧祭畤大橋ができるよりもさらに前に使われていた“祭畤橋”だ。完全に廃道となっておりアクセスする道路は存在しないが、橋だけが現存している。
橋は交通を飛躍的に便利にさせるが、橋を架けることは容易ではない。それゆえに、交通量が多い、または増加が見込まれる道路に限り、時代の流れとともに架け替えられてきた。新しい橋が完成すると古い橋は不要となるが、解体するにも費用がかかる。そのため、特に危険が生じず邪魔にならなければ、そのまま放置されることも多い。
より便利に、より快適に多くの人や車両が通れるようにするため役目を終えた祭畤橋。災害によって突然終わりを迎え、教訓を後世に残すためあえて保存されている旧祭畤大橋。そして、さらに進化を遂げ、国道342号の交通を支えている新しい祭畤大橋。祭畤被災地展望の丘は、三者三様といえる橋の姿を一度に見ることができる。災害の教訓を今に伝える場所であると同時に、3世代にわたり進化し続けてきた橋や道路の歴史を感じられる場所でもあるのだ。
将来発生する災害を予知することは難しいし、被害を完全に防ぐこともできない。何かできることがあるとすれば、過去に学び、備えることだ。祭畤被災地展望の丘と対岸の見学通路は、休日でも人影はまばらだ。多くの人に、ぜひ一度、訪れてほしいと思う。
写真=鹿取茂雄