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「論破王」と言われたりするけれど…

 僕も「勝ちたい」などと思って会話をしているわけではありません。「論破王」と言われたりしますが、実生活の場では「言い負けている」ように見えることだって、たくさんあると思います。

 でも、表面的に口で勝とうが負けようが、どうだっていいことです。

 大切なのは「その会話において本当に大切なのは何か」ということを、自分でちゃんと見極められているかどうかなんです。

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 で、何が大切なのかというと、会話の結果、物事がストレスなく進むとか、自分にとってメリットが生じたりするのが望ましいわけです。

 そのためには、相手を言い負かす必要は必ずしもありません。

 僕の話に説得されて相手が動くよりも、むしろ言い方を工夫することで相手が自分から僕の思う通りに行動してくれるほうが、その後スムーズに進むわけです。

相手を動かす工夫をする

 たとえば、休暇で自分は飛行機に乗って島に行きたいのに、家族がどうしてもドライブで山に行きたがっているとします。その時に「島に行きたい」と真正面から主張しても家族は聞き入れてくれない可能性があります。具体的な理由として当日の天気予報や渋滞の話を交えて「ドライブ旅行をやめるべきだ」などと熱心に説得したところで、かえって反感を買うだけかもしれません。

 たとえ正論ではあっても、自分が心から納得していないと、人は自分と異なる意見を必ずしも受け入れてはくれないわけです。

撮影 稲垣純也

 そこで、相手を言い負かす説得という形ではなく、

「休暇中の天気予報だと、山のあたりは土砂崩れの危険性が高いらしいね。渋滞もひどいようだし」

 などとつぶやいてみるとしましょう。

「だったら山はやめたほうがいいね。ドライブもやめとこうか」

「いっそのこと飛行機で遠出しない? 島に行くとか」なんて家族のほうから言い出すかもしれません。

 そもそも日本って、アメリカのように論理的に説得することが肯定される文化とは違うんです。特に集団だと、同調圧力が働いて多数の意見が通りやすい一方、少数の意見は受け入れられにくいので、正論を主張しても軽んじられることは大いにあるわけです。

 だからこそ、相手を説得しようなどと思わずに、相手を動かす工夫が必要です。