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東京は「通り」で、大阪は送り仮名のない「通」… “道”の呼び名の“不思議な歴史”

『地名散歩 地図に隠された歴史をたどる』より #1

2023/12/09

genre : ライフ, 社会, 歴史

note

 平安京ではかつて三条大路 、七条大路のように呼ばれていたが、現在の京都では東西、南北ともに幅員にかかわらず「通」でほぼ統一されている。京都のJR西大路駅(南区)に見られるように大路も「現役」とはいえ、京都市電の外郭環状線が走っていた通りは西大路通、北大路通、東大路通といずれも「通」の字が付いている。

新潟には歴史的由来に基づく小路が存在

 大路より小路の方が多い。仙台市は戦後の住居表示の実施で多くの町名が失われたが、生き残った町の中に小路の付くものがあり、市営地下鉄東西線連坊駅の東西には連坊小路 。寺院の多い地区で、かつて陸奥国分寺が隆盛であった頃に24もの塔頭が連なっていたことに由来するという(異説もあり)。仙台駅の北東側のすぐ近くには元寺小路があるが、江戸初期に寺が移転したためにこの名が付いた。今ではJR東北本線の東側にのみ残っている。いずれも通り名に由来する町名であるが、通り名と町名が一致する例は全国に多い。

戦前の仙台市に見られる通り名=町名。小路や丁(ちょう・武家町)、町(まち・町人町)など、市電の停留場などにも採用されていた。「仙台市街全図」盛文館 昭和15年発行

 新潟市の旧市街には、自動車が通れない細道を含めて名前の付いた小路がびっしりと並んでいる。町名ではないが、銅屋(鋳物師)の屋敷があったことに由来する銅屋小路、信濃川に面して舟を納める蔵が並んでいたことから舟蔵小路 、法音寺に通じる法音寺小路、加賀屋三九郎の屋敷があったことによる加賀屋小路などなど、さまざまな歴史的由来に基づく小路があり、最近は市民と行政が協力してこれらの小路の由来を記した看板や地図を設置するなど、昔を今に伝える良い仕事を地道に行っている。ついでながら、地域によっては「しょうじ」と読む例もあるが、いずれにせよ失われた通り名が多いのは残念だ。

東京は「通り」で、大阪は送り仮名のない「通」… “道”の呼び名の“不思議な歴史”

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