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「1645年から1715年までの70年間に、地球の平均気温が0.2度下がった記録がある。この寒冷期は発見者の名前を取り『マウンダー極小期』と呼ばれており、太陽活動の低下が引き起こしたものだ。太陽黒点の変化によって、太陽活動が低下し寒冷化が起きる可能性は否定できない。おそらく数年から数十年にわたる気候の寒冷化をもたらすため、脱炭素政策を推進する根底が変わってしまうかもしれない」

世界中で広まる脱炭素の動き ©時事通信社

火山噴火による寒冷化が飢饉や凶作、疫病の歴史と深く関与

 そして、地球の気温を変化させるもう一つの要素が、「火山噴火」だ。火山の噴火によって寒冷化することが考えられるという。

「火山が噴火すると、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)やフッ素を含む火山ガスを大量に放出する。二酸化硫黄は成層圏に存在する水と反応して、硫酸エアロゾルと呼ばれる微粒子を発生させる。エアロゾルは火山灰などとともに成層圏を煙霧のように、長時間にわたり滞留することになる。火山灰やエアロゾルが太陽からの入射光をさえぎることで、地上に達する太陽光のエネルギーが数年にわたって減少、異常低温を引き起こす『火山の冬』と呼ばれる現象が起きる」

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20世紀最大規模だったピナトゥボ火山の大噴火 ©時事通信社

 鎌田氏によれば、18世紀以降の火山噴火の歴史を紐解くと、火山噴火による寒冷化が各国の飢饉や凶作、疫病の歴史と深く関わっているという。ただ、20世紀以降は巨大噴火がほとんど起きていない。

「20世紀はそれ以前と比べて巨大噴火がほとんどなかった。よって、大噴火による気温低下がなかったため、20世紀後半の温暖化が顕在化した可能性も否定できない。つまり、地球温暖化は、1回の大噴火によって状況が一気に変わるかもしれないのだ」

 鎌田氏は、地球温暖化がこのまま急激に進行すれば、早急の対策が必要であると前置きをした上で、「自然界にはさまざまな周期の変動があり、長い将来にわたって今の勢いで地球温暖化が進むかどうかは、必ずしも確定的ではないのではないか」と訴える。

 地球の気温変化の要因について図版と共に分析し、世界各国の火山噴火と寒冷化の歴史を明らかにした鎌田氏の論考「火山の大噴火一発で地球は寒冷化する」全文は、1月10日発売の月刊「文藝春秋」2月号と、「文藝春秋 電子版」(1月9日公開)に掲載される。