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館山駅舎の白い壁とオレンジ色の瓦は南国の青空に良く映える。スペイン風、南ヨーロッパ情緒をイメージした駅舎なのだとか。駅前広場にはヤシの木がそびえ立ち、駅から西側の海に向かってまっすぐ伸びる駅前通りはヤシ並木。ここははたして日本なのか、それとも地中海か……。
などとあおりたいところだが、やっぱりどこからどう見ても日本である。館山駅西口から少し海に向かって歩き、ヤシ並木から逸れて路地に入るとザ・日本のスナック街。少し歩けばチェーンのカラオケ店もあったりして、やっぱりどこまでも日本である。
海沿いまで歩けば、館山の海水浴場が広がる。真冬なので海水浴客はひとりもいないが、目の前の海は東京湾だ。海岸沿いにはリゾートホテルのような建物が見えるし、海の向こうにはいくつもの大きな船が行き交う。そして、天気の良さに恵まれたおかげで、遠くにはうっすらと富士山の山影が浮かび上がっている。
海沿いの道にもヤシの木が植えられて、南国風を装っている。ただ、そうした町並みよりも南房総の海からも遠く富士山が見えるということに感動してしまうのだから、日本人の性というものはなかなか変えられない。
海水浴場近くの歓楽街を抜け、南に向かう
海水浴場の近く、スナックの集まる歓楽街を抜けて、南に向かってさらに歩く。汐入川という川を渡った南側は住宅地だ。戸建て住宅がギッシリと並んでいて、さらに南を見れば小高い山。その上には、お城の天守閣のようなものが建っている。
館山の市街地南部にあるこの山は、城山という。文字通りかつてお城があった山で、館山城の城跡だ。この館山城こそ、中世から南房総一帯の安房国を治めた里見氏の本拠地である。