1ページ目から読む
3/3ページ目

 ——今回の作品、作画監督の本田雄さんほかアニメーターの方、錚々たるメンバーが集まって時間を掛けて作ったということですけれども、今後アニメーターの方々とのコラボだったり、展望だったり期待を含めて教えていただけますか。

 鈴木 正直に言いますとね、その仕事が果たして僕の仕事だろうか、っていうことがどこかにあるんですよ。これは同じことは宮﨑にも言えるような気がします。そもそもね、若い人にその仕事を手渡して、若い人に作ってもらう。それがもしかしたら正しいかな、っていうことも去来していますね、頭の中を。

 ——今回の2度目の受賞は日本のアニメーション界にとってどのような位置付け、意義になっていくとお考えでしょうか。今、日本のアニメは海外で高く評価されていて、日本経済が非常に厳しい中、勇気になると思うんですが。

ADVERTISEMENT

 鈴木 一番願うのはね、明るいニュースになることですよね。確かにご指摘のようにそれはもしも達成できるんなら、本当に良かったなと思います。

「ナウシカ続編」は?

 ——今回21年ぶりの2度目の受賞ということで、この21年の間に、ジブリさんの作品もそうですけども他のスタジオの作品もノミネートはされるけれども受賞はしてこなかった。ジブリでしか21年、獲れてこなかった。この日本のアニメ界の現状についてなにか思うことがあれば。

 鈴木 いや、僕はその立場にいないような気もするんですけれども(笑)。その間にね、準備も色々やりました。それで、宮﨑とも色々と作りましたよ。だけども一番大きかったのはね、もしかしたら今ふと思いついたんですけども、「風立ちぬ」を作ってからの10年、もう新しい作品がないだろうと思ったら出てきた。それが大きかったんじゃないですかね。そんな気がしていますね。日本でいろんな人が観てくれたのはね、「10年ぶりだけれども観てみよう」っていう。宮﨑駿(作品)をテレビでしか観たことがない。しかし、映画館で観るとどうなんだろうと。たぶん、そんなことが起きたりしている。それから、この間にジブリも日本を除いた海外ではいわゆる「配信」っていうことをやって、いろんな人が観る機会があったんですよ。特にアメリカがすごかったんですね。それで言うと、どうも「この人(宮﨑監督)、面白いらしい」と。それで今、アメリカで多くの人が観てくれてるんじゃないかなっていう気がします。

 ——アカデミー賞の(YouTubeチャンネルで3月3日に生配信された)ライブストリーム動画に宮﨑さんが出たときにおヒゲがないという……剃ったということが話題になっていて、ちょっと驚いたんですが、鈴木さんも同じ動画に出ていらっしゃいましたが、何か聞いていましたか?

 鈴木 あれは、僕が「切ったら?」って言ったんですよ。気分転換にね、「切ったらどうなの?」みたいな言い方。本人嫌がってましたけどもね。冗談で、剃っちゃいましたね。ヒゲがあると立派そうに見えるじゃないですか。それを取っ払うところからスタートなんていうことをね、ちょっと考えたんですよね。で、本人もね、ヒゲを剃ったあとは、それまではそうじゃなかったんだと思うんですけども、やたら鏡を気にするようになったというか。そんなこともありました。

 ——今日は3月11日ということで、東日本大震災の大きい節目でもあり、「風の谷のナウシカ」を公開されたのが、ちょうど1984年の今日ということで、40周年になると思うんです。ファンの間では、「風の谷のナウシカ」の続編への期待も上がってると思いますが、鈴木さんが傍で見ていて、ナウシカっていうのはもう1回なにかやる可能性がありそうですか。

 鈴木 (ナウシカ公開から)40周年っていうんですか。ジブリってねえ、何周年記念っていうのはただの1度もやってないんですよ。なんでかというと理由があるんです。宮﨑と僕が大嫌いだからですよ。それによって困るときもあるんです。会社ができてから何年経ったんだろう、っていうときにね。節目があると良いんですけれどもね。でも、何周年記念っていうのは、過去を振り返るんですよ。やっぱりできれば前を向いていたい。それが大きいですね。

 それともう一つ、ナウシカをもう一度、その続きをやる気があるのかって……その機は逸しましたね。で、これ(3月11日)はね、ジブリの運命が決まった日なんですけども、当時、それこそ40年前ですか、ナウシカを作って映画公開しました。そうしたらおかげさまで大ヒットしたんですよ。そうすると当時、そのお金を出してくれたのが徳間書店の徳間康快。普通だったらですよ、「パート2をやれ」と言うのが普通でしょう? その徳間っていう社長はね、ひと言も言わないんです。で、常に新しい物を求めたんです。もしかしたらね、その精神が今のジブリに……ジブリを作ってくれたのは徳間康快っていう人なんですけれども、その精神を受け継いでいるのかなって。