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「自由」や「権利」それを制限する意味を考える必要がある

 校則の作成について、以前は生徒部(生徒指導部)の教師が主体となって行っていたものが、条例制定後は学級代表をはじめとした生徒や教師が集まった場所で生徒が投票を行うことになったものの、生徒自身が規則を主張するので、条例制定前と大きく変化したところはないという[教師A]。

 

(出羽孝行「京畿道児童生徒人権条例制定後の学校の変化に関する研究」2015年)

 これは日本の学校現場でも起きており、これまでの延長線上で校則を考えるのではなく、一度ゼロベースで「自由」や「権利」それを制限する意味を考える必要があるのだろう。

写真はイメージ(写真:milatas/イメージマート)

韓国・国家人権委員会による調査結果

 ソウル市では、中高生の髪型や髪色を規制する校則について、2018年に市教育庁が2019年秋季からの撤廃を各校に要請したが、2021年に、韓国・国家人権委員会が調査したところ、行き過ぎた校則を設けている学校は31校(中学校44校のうち9校、高校85校のうち22校)にのぼり、そのうち27校では違反者に対する罰点の付与その他の指導・取り締まりが行われていたことが明らかとなっている。

 残っていた校則として、例えば、「生徒の染髪やパーマの全面的制限」「宗教的アクセサリーを含むすべてのアクセサリーの着用禁止」「制服をジャケットまですべて着用しなければコートを着ることを認めない運用」など、10項目以上の制限を設けていたと指摘されている。

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 そうした実態を踏まえ、国家人権委員会は、個性を表現する権利、一般的な行動自由権などの基本権を侵害しているとして、「中高生に対して頭髪・服装などの容姿を制限する過度な学則は改正しなければならない」と、31校全ての校長に対し、校則改正、指導の見直しの勧告を出している。国家人権委員会は、政府から独立した機関であり、今回の調査・勧告もソウル市内の学校で生徒の頭髪・服装などが過度に制限されているという一般市民からの多数の申立てを受けて出されている。

 今後この勧告がどこまで尊重され、学校現場が変わっていくかはまだ不明であるが、今後日本でも本格的に「ブラック校則」の見直し、生徒の学校運営への参加を進めていくにあたって、参考になる点は多い。

 韓国の事例を踏まえると、重要なポイントは3つあるように思える。

 一つ目が、根拠となる法律・条例の策定。二つ目が、定期的に行政が実態調査、介入(外部からも申立てできるように)。三つ目が、大人・子どもへの人権教育である。具体的に解説しよう。