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「ステージ4でも諦めない」国立大学の教授でさえも騙された…「がん“エセ医療”」の悪質すぎる“実態”とは

『がん「エセ医療」の罠』#1

2024/05/17

source : 文春新書

genre : ライフ, 医療

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 日本は世界トップクラスのがん医療を、保険診療で受けることができるが、この優れた制度を知らない人が多い。そこでエセ医療は「多額のカネを払えば、保険診療よりも優れた特別ながん治療を受けられるのではないか」という幻想を巧妙な方法で患者に抱かせる。

 その一つがホームページなどに掲載されたCTなどの「症例画像」だ。免疫細胞療法などのエセ医療で「がんが劇的に消えた」とされる証拠の画像は、患者にとって強い説得力を持つ。

 国立がん研究センター・がん対策情報センター本部の若尾文彦副本部長(放射線科医)に、あるクリニックの「症例画像」を検証してもらった。その結果、異なる位置の画像を並べて、まるで病変(がん)が消えたように見せているケースが複数見つかった。

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格好のターゲットは…

 エセ医療にとって格好のターゲットになっているのが、がんが転移、または再発した、厳しい状況に立たされた患者である。「末期がんでもあきらめない」、「体に優しいがん治療」などのフレーズで患者を奮い立たせ、高額な自由診療に誘導するのだ。そして、著名な大学やブランド病院などの名前を巧みに利用して、患者を信用させる。

※写真はイメージです ©beauty_box/イメージマート

 免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の開発が評価されて、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学特別教授の本庶佑氏は、自由診療の免疫細胞療法について「明確なエビデンスがない医療をビジネスとしてやるのは、明らかに『医の倫理』に反している」と厳しく批判した(「文藝春秋」2020年3月号・筆者インタビュー)。

「免疫細胞療法」以外にも、話題の光免疫療法(レーザー光でがんをピンポイントで治療する)とは似て非なる「自由診療の光免疫療法」、「高濃度ビタミンC点滴」、「オゾン療法」などのエセ医療が、自由診療として堂々と行われている。これらは本物のがん専門医なら、絶対に勧めない治療だ。

 たとえ患者自身が冷静でも、家族や友人などがエセ医療を熱心に勧めるケースもある。がん医療の現実を知らない人にとっては、ネットで宣伝されている謳い文句を真に受けて、「なぜこんなに素晴らしい治療を受けないのか?」と思うらしい。患者を助けたいという善意さえも、エセ医療は利用する。

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