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 当時の自分は「(厳しい現実は目の前にあっても)とりあえず夜は寝て、朝は起きる」というふうに過ごしていました。精神的には大人にならざるを得なかった。だって、親が離婚した当時、私は小学校5年生で妹が小学校1年生。一緒に住むことになった母は離婚してからダブルワークで、朝は私たちが起きる前に家を出て喫茶店を営み、夜はうどん屋さんで21時までパートで働いていたので、必然的に私が妹の面倒を見ることになりました。不満を言っている暇はなく、まず姉の私が妹をたたき起こして朝ごはんを食べさせて、髪を結んであげて学校に送り出すのが先なわけです(笑)。

写真・杉山秀樹(文藝春秋写真部)

ある日、先輩に呼び出されて

 沙羅が通信制高校へ進学したのは、全日制に通うには不安があったから。もうひとつ、自分の「将来」のために一歩でも進もうとしたから。

 

(「文庫版特別エッセイ」より抜粋)

 学校に行くことがすべてではないけれども、学校に行き続けることで開かれる未来が少しはあるかもしれない、と思うんです。極端に言うと、「学校へ行ったら死んでしまう」と思い詰めている人は行かない方がいいと思います。たとえば、センシティブな話ですが、夏休みが明けて、学校に行きたくなくて9月1日に自殺をする子どもが多いと聞きます。そんな追い詰められた精神で行くことはないと思う。だけど、学校に行くことを全くあきらめてしまったら、その先の選べるはずの道が閉ざされてしまうかもしれない、と学生時代の私は思ったのです。

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 そのような想いもあって、週1回の登校で済む「通信制」という選択肢もあるよ、ということをこの小説を通じて、もし悩んでいる学生の方がいたら、お伝えできれば良いなと思いました。