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  斎藤氏は「俺は知事だぞ」と述べてホテルの夕食について県職員に無理な要求をさせようとしたり、レクチャーの場で机をたたきながら「知事の言うことが聞けないのか」と激高したとも伝えられている。こうした言動も、特権意識を持つ斎藤氏が県職員らを「見下して」不合理な要求をしたものとして、「パワハラ認定」される可能性が高いのではないだろうか。

  また斎藤氏は県職員のプライベートの時間まで支配した。アンケートには斎藤氏が休日・深夜に連絡のチャットを送り付けてくる実態が記されている。

  こうした上司による「業務時間外の業務連絡」を巡っては、ある生命保険会社について裁判が起こされたことがある。これは育児のために時短勤務だった部下に対して上司がその帰宅後に頻繁に電話、遅いときは夜11時になっていたという事案で、裁判所はこの「電話攻撃」を頻度の高さなどから「適正な業務の範囲を超える」と判断、パワハラと認定した。

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  では、斎藤氏はどうか。

21年7月、兵庫県知事選で当選確実となり喜ぶ斎藤元彦氏 ©時事通信

 斎藤氏と県職員との休日・夜間のチャットやり取りは昨年度だけで2165件に上り、夜中の11時過ぎまで続くやり取りもあったという。さらにその中身は「県の電子商品券の宣伝用うちわに、自分の顔写真が入っていないことへの苦言」など、どう考えても緊急ではないものが多い。過去の裁判例から見ればこれも十分「パワハラ認定」が考えられる。

「パワハラそのものの可能性が高い言動」とは

  そして数ある斎藤氏の疑惑の中でも最も深刻なのは「公益通報者つぶし」だ。斎藤氏の「パワハラ」「おねだり」を含む様々な疑惑を匿名で告発する文書が出されると、斎藤氏らは直ちに「通報者探し」を始めた。

  そして文書を作成した当時西播磨県民局長のX氏は、片山安孝副知事(当時)から苛烈な「取調べ」を受けただけでなく、使っていたパソコンからプライバシー情報を抜き出されて県議らに暴露され、ついには自ら命を絶つという悲劇が起きてしまった。

7月12日、記者会見の冒頭で謝罪する斎藤元彦知事 ©時事通信

  私的な情報を勝手に広めることに「業務上の必要性」があるとは考えにくいから、この斎藤氏側の所業は、上位者が部下のプライバシー情報を職場の一部に広め就業環境を劣悪にする「パワハラ」そのものの可能性が高い。しかし、それだけではない。

 プライバシー侵害は民事上の不法行為に当たるので、損害賠償請求が可能だ。また地方公共団体内でこのような不法行為が行われて命が失われたのだから、その多大な損失についてご遺族が因果関係を示し、国家賠償請求を行うことも可能だろう。