2人が共通して関心を示す「民藝」

 メディアアーティストの落合陽一氏と、批評家の先崎彰容氏が「文藝春秋 電子版」のオンライン番組に出演、「日本近現代思想史にとって『デジタルネイチャー』とは何か」「ポストモダンと“弥生的なもの”」をテーマに語り合った。

落合陽一氏(左)と先崎彰容氏 ©文藝春秋

 先端テクノロジーについての研究や表現活動で知られる落合氏と、日本倫理思想史を専門とする先崎氏という異色の組み合わせだが、2人が共通して関心を示すものとして「民藝」の存在がある。

「最近は民藝に興味があって、柳宗悦や柳の引用する鈴木大拙をよく読んでいます。柳のいう『無事の美』は宗教以前の倫理なのではないでしょうか」(落合氏)

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落合陽一氏 ©文藝春秋

「日本の倫理は古くから宗教よりもモノが持つ“美”に近づいていく傾向がある」(先崎氏)

生成AI研究の危険性とは?

 先崎氏も落合氏も近代以降の西欧由来の哲学ではなく、日本古来の思想や倫理にともに着目している。議論は加速度的に進む生成AI研究についてもおよび、その危険性が検討されている。

「技術進化によって社会を合理的に設計しようとするのが『テクノ・リバタリアニズム』です。ただ、これでは一種の独裁に陥らざるを得ない」(先崎氏)

先崎彰容氏 ©文藝春秋

「社会の制度を高速で変えられない間は、制度をラディカルに変えてはいけない。それが最近の私の考えです」(落合氏)

 同番組では「古事記」と「日本書紀」の違いや、翌年に予定されている落合氏がプロデューサーを務める大阪万博シンポジウムについても意見が交わされている。

「文藝春秋 電子版」では、全編計74分におよぶ番組「日本近現代思想史にとって『デジタルネイチャー』とは何か」「ポストモダンと“弥生的なもの”」のフル動画をそれぞれ配信している。