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解雇規制は緩和すべきか

 軽部 小泉進次郎さんが打ち出した解雇規制の見直しは大きな注目を集めました。リスキリングや再就職支援を条件に大企業の整理解雇の要件の緩和を訴え、1年以内に実現する、というかなり思い切った考えですから大きな物議を醸しましたね。

解雇規制の見直しに小泉進次郎氏が言及すると大きな物議を醸した ©文藝春秋

 中空 私は経済を活性化するために、解雇の金銭解決制度を導入するのはありだと思います。但し選挙の場合には伝え方を間違えると猛反発となります。小泉さんへの批判は主旨より伝え方にあったと思います。

 軽部 小泉さんは、解雇の自由化を考えているわけではない、正規・非正規の格差解消のための労働市場改革をしたいのだと説明しました。

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 柴山 正規雇用と非正規雇用の間にある壁は、大きな問題です。正規雇用は何重にも守られて賃金も高いのに、非正規雇用の安定性は極めて低く、賃金も安い。この格差や分断を次の世代にまで残していいのか。私の答えはノーです。

 軽部 2014年に消費税を8%に引き上げる際、政府は臨時福祉給付金(簡素な給付措置)を交付しました。消費税には逆進性がありますから、住民税非課税世帯に対して、1人につき1万円を支給する制度でした。その対象人口は2400万人ほど。つまり、10年前の数字でも、日本の人口の5分の1が、住民税が非課税になるほど厳しい暮らしをしている。その後、格差は拡大している可能性があります。

 日本のジニ係数(社会の所得格差を測る指標)はそこまで大きくなっているわけではありません。しかしバブル崩壊後、「総中流社会」と言われていた日本の格差がじわじわと拡大してきたことは確かです。

 また、いったん非正規雇用者になると、なかなか正規雇用者になるのが難しいことが、その格差の固定化をもたらしている。この制度的な問題を解決しないと、欧米のように格差と分断が著しく拡大し、社会が壊れかねない。そのような危機感があったからこそ、総裁選候補者たちが「分厚い中間層」の復活を唱えたのでしょうね。

 中空 経団連からも「格差問題の解決、分厚い中間層の再構築」を訴えられていますから、言わざるを得ない面があるのでしょう。選挙で勝つためにはマスを取り込む必要があるわけですから、あまりニッチな部分に振って共感を得ても意味がなく、どうしても誰も反対しないような一般的なことしか言えないのだと思います。

 とはいえ、分厚い中間層をどうやって作るのかと問いたいところでもありますが、具体的な答えを提示する候補はいませんでした。私自身は分厚い中間層を作るには、競争力をつけるほうが先決ではないかと思います。たくさん儲けて、たくさん税金を払う「分厚い勝ち組」です。まぁそんなことを言えば、選挙に絶対負けそうですよね(笑)。