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亡くなったX氏が決して触れられたくなかったこと

  では「亡くなった告発者の名誉を傷つけるような発信」(読売)について振り返ろう。私が今年の『週刊文春』で最も印象深かった記事は7月25日号だった。告発文書を「怪文書」と斎藤知事に言われた元県幹部X氏の情報が兵庫県庁で出回っていたという。
 
 そのうえで文春はこう書いていたのである。《中身についてはX氏が決して触れられたくなかったことであり、本稿では言及しない。ただ、X氏の告発を握りつぶすためにこれを利用しようとする行為がどうしようもなく卑劣であることは論を俟たない。》
 
 いかがだろうか。“文春砲”が続く中で、この件については、文春はX氏のプライベートについては報じなかったのだ。公益通報の話とは別問題だからだ。これを利用しようとする行為は「卑劣」とはっきり書いている。

斎藤元彦知事 ©時事通信社

 しかし選挙戦に利用した人たちがいた。注目したいのは国民民主党の玉木代表のプライベートが先日報じられたときは「不倫より政策を」という声も大きかったが、今回は亡くなった告発者のプライベートが判断材料のひとつにされていたことだ。SNSを通して支持された点は玉木氏も斎藤氏も共通するのに一体どうしたことだろう。「公」と「私」について考えさせられるし、時々で扱いの差があるならなおさらだ。

PR会社の社長が内情を暴露

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  あと、“独りぼっちで闘っている斎藤知事”の広報戦略の詳細を公開する人も出てきた。兵庫県のPR会社「merchu(メルチュ)」社長・折田楓氏である。
 
 氏が投稿したブログの冒頭にはこうある。《「SNS」という言葉が一人歩きしてしまっているので、斎藤陣営で広報全般を任せていただいていた立場として、まとめを残しておきたいと思います。》
 
 SNSの勝利ではなく、SNSを仕掛けた自分の勝利とPRしたいのだろうか。折田氏は「#さいとう元知事がんばれ」のハッシュタグの発信もおこなったと誇らしげに書いている。
 
 現在は削除されているが、折田氏の投稿には当初「SNS運用フェーズ」として10月1日から13日までは「種まき」、14日から31日は「育成」、11月1日から17日は「収穫」とあり、まるでSNSで斎藤氏に賛同した人たちは「稲」のような扱いだ。