古和久朋・神戸大学大学院教授のグループが行った研究プログラム「J-MINT PRIME Tamba」の効果が注目されている。参加した高齢者の多くに、認知機能・身体機能の向上が見られたからだ。プログラムの内容について、古和氏が語る。(取材・構成 秋山千佳)
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私たちのプログラムがどのようなものなのか、構成する4項目をそれぞれ具体的にご紹介していきます。
体と脳を動かす「二重課題運動」
一つ目は、運動です。
参加者には週1回、体育館や大会議室に集まってもらい、理学療法士や作業療法士の指導で計90分の運動教室を行いました。ウォーミングアップ(ストレッチ)に5分、全身運動(筋力・持久力トレーニング)を50分、二重課題運動を20分、クールダウン(ストレッチと呼吸調整)に5分、グループコミュニケーションに10分という流れです。
このうち「二重課題運動」というものが、今回のプログラムで最も重要な要素だったと考えています。
二重課題運動は「ながら運動」と言い換えるとわかりやすいかもしれませんね。じんわり汗をかくレベルの運動と、計算などの認知課題を組み合わせた運動のことです。長寿研が認知症予防体操として開発、普及にあたっています。
先ほど私たちの研究が先行研究より大きな成果を挙げたと述べましたが、諸外国はエアロビクスなどの有酸素運動だけを週3回行っていたところ、J-MINT研究では二重課題運動を取り入れて週1回にしました。回数は少なくしても効果があったのは、運動介入の質が高かったという証でしょう。長寿研が世界に誇るべき体操だと思います。
教室で行った二重課題運動の例を挙げると、この矢印が提示されたら手足をこう動かすと覚えてもらい、足踏みしながら矢印の指示に合わせて動くというもの。さらに難易度を上げて、各番号に対応するエアロビクスの動きを覚えてもらい、提示された番号に対応する動きを思い出して運動してもらうというもの。
また、いろんな果物の値段を覚えてもらい、足踏みしながら、画面に表示される果物の絵の合計金額を計算するというものもありました。