何でもすぐに口にするけどそれは浅はかで、農家から笑われるだけ――
(聞き手 窪田新之助・ノンフィクション作家)
バレーボール日本代表の“スーパーエース”、また同監督として活躍した「ガイチ」こと中垣内祐一氏(57)。2022年に故郷の福井市に戻り、江戸時代から続く実家の農業を継いだ。
見えてきたのは米作りの厳しい現実。イノシシやシカが田んぼを荒らし、収穫した米をJAに出荷しても採算割れ。おまけに農業機械や肥料などの諸経費は上がり、周辺地域の離農は加速する。政府はいまさらながら米が不足していたことを認め、増産に方針転換を図った。だが、果たして実現できるのか。
「このままでは日本の米作りは崩壊する。多くの人に農家の実情を知ってもらいたい」。8月中旬、稲穂が実る田んぼに囲まれた農業用倉庫を訪ねた。
――あいにくの雨ですね。
中垣内 稲刈りの様子を見てもらおうと思ったのですが、今日は仕事にならないので、このまま農業用倉庫で話をしましょう。
私が代表を務める株式会社農好社(のうこうしゃ)は、今後離農者が増えて耕作放棄地が増えていくという危機感から父の一夫(かずお)がつくった農業法人で、4人の従業員とともに37ヘクタールの田んぼで米だけを作っています。農地の枚数は150枚くらい。1枚の平均は約20アールと、決して大きくはありません。おまけに農地が点在しているので、作業効率は良くないですね。
品種は「ハナエチゼン」「ふくむすめ」「コシヒカリ」「ピカツンタ」「いちほまれ」。品種が多いのは作業の時期をずらすため。限られた従業員と限られた農業機械で農作業をしなければいけないので、収穫の時期が早い品種から遅い品種まで栽培しています。
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