盛田昭夫 回遊魚のような国士

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“世界のソニー”を育てた盛田昭夫(もりたあきお)(1921―1999)は、寄稿、対談を合わせて月刊「文藝春秋」に16回登場。日米関係や日本の国際的な立場についての提言が多かった。次男でソニー株式会社エグゼクティブアドバイザーの盛田昌夫(まさお)氏が、父の思い出を語る。

 父はとにかく人が好きでした。

 財界だけでなく、政治家、アーティスト、スポーツ選手など交友関係は幅広く、国内外を問いませんでした。歌手のシンディ・ローパーと頬を合わせてハグする写真が話題になるなど、日本人のイメージを変えるほど社交性がありました。

 息子が言うのも変ですが、父には独特の魅力があって、元祖ロマンスグレイですから70代になっても私よりモテたのはおもしろくなかったですね。たくさんの友人との信頼関係を築いていくことが父のレーゾンデートルだったように思えます。もちろんそれだけ多くの人に知り合えたのは、井深さんと育てたソニーという会社あってのことです。

盛田昭夫 ©文藝春秋

 井深さんと父は戦時中に、横須賀の海軍航空技術廠支廠で出会いました。戦後に井深さんが東京通信研究所を設立すると、父が新聞記事でそのことを知って再会し、東京通信工業がスタートします。井深さんが「こんな製品が作りたい」とアイディアを出し、父たちが実現する。もともとソニーはそういう会社でした。

 井深さんと父は13歳離れていましたが、いくつになっても好奇心が旺盛という点は共通していました。父はニューヨークに出張すると、FAOシュワルツという有名玩具店に寄って、井深さんが面白がりそうなおもちゃを買ってきました。私たち子どもへのお土産ではありません。私がたまに会社へ遊びに行くと、井深さんの部屋で一緒にそのおもちゃを眺めていました。

 2人は仕事仲間というより、「仲良し」としか形容できない関係でした。井深さんが脳梗塞の後遺症で会話が不自由になっても、意思疎通ができたほどです。

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source : 文藝春秋 2018年1月号

genre : ビジネス 企業