医薬品製造で出る廃棄物の量

佐藤 健太郎 サイエンスライター

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サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します

 イラン情勢の緊迫化により、石油の流通に大きな懸念が生じている。石油の不足はあらゆる分野に悪影響を与えるが、化学の世界は最も直接に大きなダメージを受ける。プラスチックや各種工業製品の原料供給が止まることももちろんだが、溶媒が入手しにくくなることの影響も甚大だ。

 ほとんどの化学反応は、原料を溶媒と呼ばれる液体に溶かし、かき混ぜることで行われる。固体同士では十分に混じり合わないから、液体に溶かさないと反応が進行しないのだ。このため反応の際には、原料の数倍から数十倍という量の溶媒が用いられる。溶媒は反応そのものには関与しないが、量でいえばむしろこちらが主役なのだ。また反応終了後、不純物を除く精製段階でも、溶媒は多量に必要だ。このため、多段階の精密な合成工程を経る医薬品などでは、最終製品の25〜100倍程度の廃棄物が出るのが通例で、溶媒はその大部分を占める。そしてこれら溶媒のほとんどは石油化学製品だから、イラン情勢の緊迫化は化学分野にとって死活問題なのだ。

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source : 文藝春秋 2026年5月号

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