串カツ田中・貫啓二 倒産寸前の会社を救った「1枚のレシピ」

最終回

松浦 達也 ライター

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「もう、やらなくても潰れる。だったら、やって潰れよう」

 いまや居酒屋として全国に344店舗を展開する「串カツ田中」。その創業社長の貫啓二(55)は2008年、抜き差しならないところまで追い込まれていた。高校卒業後、トヨタの関連会社を約10年勤め上げて退職し、大阪でバーを開業した。東京に京料理の店を出したが、リーマン・ショックで資金繰りが悪化し、借金は9000万円まで膨れ上がった。「東京を引き払おう」。そんな決断をした直後に見つかった1枚のレシピ。店名の「田中」は2022年まで副社長で長年のビジネスパートナーだった田中洋江さんの名前から取った。串カツのレシピは田中の父・勇吉氏が遺したメモ書きだったからだ。崖っぷちでかき集めた手持ち資金の350万円で打って出た最後の一勝負だった。

 1971(昭和46)年1月27日、貫啓二は大阪府三島郡島本町に生まれた。島本町は大阪と京都との境、淀川の西岸に位置する。現在は両都市圏のベッドタウンとして知られるが、貫が子どものころは、畑の広がるひなびた土地だったという。

「当時は中学校の周りも畑ばかりでした。長屋と戸建てがぽつぽつと点在する風景を覚えています」

 家族は両親と4歳年上の兄の4人。父は中学卒業後、宮崎・延岡から集団就職で大阪へ出てきた職工、母は兵庫・西宮出身で、結婚後はパートに出ながら家計を支えた。

「裕福ではなかったけど、食べるのに困るというわけでもない、普通の家庭でした。両親が働きに出ているいわゆる鍵っ子。性格は内向的で友達といえば、同い年の幼なじみが2、3人いるだけでした」

 そう話す貫は仕立てのいいスーツが似合うスマートな経営者然とした佇まいだ。だが、少し控えめなボリュームの関西弁で訥々と話す様を見ると、確かに生まれついての社交上手ではなかったのかもしれない。

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source : 文藝春秋 2026年5月号

genre : ビジネス 企業 グルメ