戦後81年目の論点 昭和史はどう伝えられるのか

歴史の捉え方が変わった

保阪 正康 昭和史研究家

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いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。

 戦後80年という節目に、昭和史の受け止め方に地殻変動ともいえる大きな変化が起きています。かつて昭和史は、日本人にとって生々しい戦争の体験と結びついた「同時代史」でした。しかし、時が経ち終戦時に5歳くらいで、うっすらと戦争の記憶のある人でもすでに80代半ばとなり、実際に兵士として戦場に立った人は、若くても100歳近くになっています。数年来このような点から、私は昭和史が「同時代史」から「歴史」となり、新しい解釈が生まれると、考えてきました。

 その見立てが誤りではないと感じたのは、立て続けに出会った20代から40代の若い世代との語らいでした。昭和100年ということもあり、2025年は例年よりも多く昭和史に関する取材を受けたり、大学などでの講演を行う機会をいただきました。

 これまでも若い世代と会うたびに昭和史をどのように考え、どのような知識を持っているのか、定点観測的に「取材」をしてきました。2025年は、それまで以上に世代間の歴史に対する知識や認識の違いを浮き彫りにすると同時に、新たな時代の到来を予感できた一年でした。

 まず印象に残っているのは、講演を行った北海道大学の学生たちです。私は学生たちの年齢に近い、学徒出陣で亡くなった人たちについて話をしました。1943年(昭和18年)、時の東條英機内閣は兵員不足を補うために、文系を中心とした大学生の徴兵猶予を止め、出征させることになりました。学徒兵たちの実態はいまもって不明ですが、10万人以上の学生が戦地に赴いたとされます。

 彼らの遺稿を集めた『きけ わだつみのこえ』を題材に、生き残りの元学徒兵たちから聞いた話を交えて話をしたのです。同書を読むたびに涙がこぼれそうになるのが、慶応義塾大学の学生で特攻隊員として戦死した上原良司の残した文章です。上原は戦争への批判を書いたうえで、「明日は自由主義者が一人この世から去ってゆきます」と自らの死について客観的に綴り、いま読んでも古びない。

 ベストセラーにもなった『きけ わだつみのこえ』は我々の世代にとって誰もが知る書籍でしたが、今の学生たちにとっては新鮮な驚きに満ちているものだったようです。講演のあと、「(戦時下で)ここまで冷静に戦争を見ている人がいたことに驚いた」といった感想があったのです。

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