秋野不矩 インドと出逢った秋野不矩

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女性の日本画家として数々の業績を残した秋野不矩(あきのふく)(1908―2001)。54歳の時、インドの大学の客員教授を1年間務めたことからインドに魅せられ、たびたび作品のモチーフとした。交流のあった女優の岸田今日子(きしだきょうこ)氏が振り返る。

 

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「鮮やか」という言葉を聞くと、わたしは秋野不矩さんの絵の、あのインドの壁の色を思い出す。そしてその連想は、不矩さんの生き方そのものから来ているのだと、今さらのように感じないではいられない。

 不矩さんは、決して世に認められない画家ではなかったし、若い時から大きな展覧会への入選、特選、受賞も数多い。けれども、それに甘んじて日本画の大家として収まるような人だったら、こんなふうに人の心を動かす絵は描けなかったと思う。

秋野不矩 ©文藝春秋

 6人の子供を産み育て、離婚の経験も経て不矩さんはインドと出逢った。54歳だったという。タゴールがノーベル賞を資金にして創設した大学に、客員教授として招かれたのだった。一ことの言葉も判らない、どんな所かも知らない国に、衝動的に行きたいと思ったという、明治生まれの不矩さんを、わたしは同じ日本の女として頼もしく感じ、嬉しくなる。

 まだインドに行ったことのない頃、不矩さんは小さな子供が炎天下に立って手放しで泣いている姿をイメージした。それは実際にインドで、いたる所で見る風景だった。きっと不矩さんとインドとは、出逢わなければならない何かで結ばれていたに違いない。そして大学を辞めても、十何回か訪れることになる。

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source : 文藝春秋 2002年2月号

genre : エンタメ アート