川喜多かしこ マダム・カワキタを飾った古代紫の美

品田 雄吉 映画評論家

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映画文化活動家の川喜多(かわきた)かしこ(1908―1993)は大阪府生まれ。東和商事社長・川喜多長政と結婚、戦前戦後を通じ夫妻で欧州映画の輸入に努める。邦画を海外に紹介、国際的声価を得る上でも大きな役割を果たした。映画評論家の品田雄吉(しなだゆうきち)氏がその業績を振り返る。

 

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 俳優までも含めて、日本の映画界でもっとも美しい日本人は? という問いかけに応えられる人物は、故川喜多かしこ女史をおいてほかにいない。これは断言できる。これほどやさしく断言できることは、ほかにない。

 カンヌを始めとする世界中あまたの国際映画祭で審査員を務め、マダム・カワキタの国際的な知名度は抜群だった。いつも古代紫を基調とした和服姿で、挙措振舞いはごくごく控え目な人だったが、それは日本にいるときも、海外に出かけたときも、少しも変わらないように見えた。だが、外国の映画人たちはいち早く彼女の姿を認め、親しみと敬意を込めて挨拶するのだった。

川喜多かしこ ©文藝春秋

 古代紫は、着物だけでなく、履物や小物入れまで、その色で統一されていた。いわば、川喜多かしこのシンボル・カラーであった。ある会議で、メモをとっているのを何気なく見たら、使っているボールペンの胴の色が紫だった。が、そういう《好み》が頑ななこだわりとはまったく感じられなかったのは、自然なゆとりが身についていたからではないかと思う。川喜多かしこの古代紫には、少しも押しつけがましい自己主張は見られず、落ち着いた紫の色合いに、品のよさがひっそりとたゆたっていた。

 川喜多長政が東和商事を設立したのは昭和3年だった。のちに結婚して川喜多姓になる竹内かしこが入社したのは翌4年である。

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source : 文藝春秋 1995年8月号

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