おひとりさまの「転倒サバイバル」

上野 千鶴子 社会学者・東京大学名誉教授

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腰椎圧迫骨折を経験し分かった「人生下り坂」の歩き方

 ついに私もこのような取材を受けるようになってしまいました。転倒のことはトラウマになっていて、説明するのも辛いのですよ。

 初めての転倒事故で骨折したのは2022年秋、74歳の時でした。

 その直前までの約2年半はコロナ禍で、長距離の出張はすべてお断りしてオンラインで仕事をしていました。すっぴん、ノーブラ、ユニクロの3点セットで快適な引きこもり生活を送るうちに、いろんな感覚が鈍っていたのでしょう。

 久々に引き受けた講演の出張で「新幹線ってどうやって乗るんだっけ」なんて思いながらも新山口駅に着き、以前と同じように、片手でキャリーバッグを引いて上りエスカレーターに乗りました。

 エスカレーターが真ん中あたりまで進んだ時、キャリーの重みでバランスを崩し、体が真後ろにひっくり返ったのです。

 腰を段差の角で強打し、激痛が走りました。まったく動けず仰向けのまま上昇していくと、降り口で知らないおじさんが私の両足を持って引きずり出してくれ、駅員さんが車いすを持って飛んできました。駅員さんは対応に慣れておられました。

 よくある事故なのだろうと思いますし、私自身、60代半ばの頃にも新幹線上りエスカレーターで“転倒未遂”を起こしています。その時は右手にキャリー、左手にコーヒーを持っていて、キャリーがひっくり返りコーヒーが吹っ飛んだものの、体を捻って踏ん張れました。骨折した時もそうですが、不幸中の幸いは後続の人がいなかったこと。もしいたらドミノ倒しで私は加害者になっていましたから。

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source : 文藝春秋 2026年10月号

genre : ライフ 医療 ヘルス 教育