「ヒト」を再定義する必読書
『ヒトとAI』とは、余りにも単純で、芸のないタイトルである。副題もなく、そっけない。「老舗」岩波新書の王道的なタイトルの付け方ではある。
タイトルをもう一度眺める。『ヒトとAI』。今日的な、これ以上はないという大テーマである。AI(人工知能)が小説を書くとか、AIが仕事を奪う、といったレベルの話ではない。「ヒト」の再定義、AIが普通に存在する世界で、「ヒト」に残される事は何か、という問いで一貫される。

数式が出てくるわけでもなく、難解な用語が飛び交うわけでもない。冷静に、むしろ淡々と、「ヒトとAI」が共存する時代の、主として「倫理」が追究される。自然科学というよりも、人文科学の匂いが強い。
著者の岡野原大輔は、AIの技術開発企業を経営する40代半ばの科学者である。
「私たちは「AI以前」を知る最後の世代であり、「AI以後」を形作る最初の世代でもある」
引用前半の「最後の世代」という自己規定が責任意識を生むのか、「最後の世代」からの未来への「架橋」を強く滲ませている。「世界の厚み」とか「生存という強烈な重し」といった汗くさい言葉が、「AI以前」世代として発せられ、織り込まれる。
「無数のAIエージェントが経済活動や教育、研究といった社会的な営みの多くを担うようになったとき、現在の仕事、経済、制度、産業はどのような再設計を迫られるのか」
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