公立高校の甲子園 書かれざるカネと夢

田中 仰 ライター

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池田高・蔦監督も悩ませた、寄付金集めという“総力戦”

 2026年8月11日、阪神甲子園球場。秋田県立横手高校の一塁側アルプスはさながら同窓会の様相を呈していた。「久しぶり!」「いつの卒業生?」。朝8時プレーボールから30分前の時点で約5000の応援席が紫一色に染まる。横手高の選手が守備につけば、得点したかのような万雷の拍手が沸き起こる。

 遠藤勲(71)は横手高野球部のOBで、野球部後援会の一員でもある。地元企業が企画した甲子園応援ツアーで現地まで駆けつけた。「バス移動中は全然寝れんかったね。3万円だから文句言えんけど」。遠藤を乗せたバスは前日朝10時に秋田を発ち、この日の明け方に兵庫へ到着した。その距離じつに900キロ以上。観光地に寄りながら往復するツアーの費用は3万円。0泊3日の弾丸旅行だ。「年寄り多いからトイレ休憩が多いの。1時間に2回くらい寄ってくれるんだから」

 横手市が甲子園出場校を支える様子はまさに「街ぐるみ」で、微笑ましくもある。JR横手駅は今夏の秋田大会で横手高が勝ち上がる様子を収めた記事や写真を駅構内に展示した。地元のバス会社はツアーを企画して現地応援を呼びかけた。さらに市は1000万円を補助し、「横手やきそば暖簾会」は売上の一部(21万1000円)を学校へ寄付した。現地には57年前の前回甲子園出場時に演奏した吹奏楽部OBの姿もあった。横手市民と卒業生にとっても長年待ちわびた「ハレの日」であった。

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source : 文藝春秋 2026年10月号

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